1250年〜1350年 盾型 中世 ガーネット リング 指輪
13世紀から14世紀のフランスで制作された中世のゴールドリングです。
金が現代よりもはるかに希少で限られた人々だけが身につけることのできた時代に作られた貴重な指輪です。
中世において、金の指輪は単なる装飾品ではなく、富や身分、信仰、権威を示す特別な品であり、
貴族や高位聖職者など限られた階層の持ち物であったと考えられます。
ベゼルには深い赤紫色をたたえたガーネットがセットされています。
石は当時のオリジナルですが、
中世のリングは長い年月の中で石が失われていたり後世に別の石へ入れ替えられているものも多く、
オリジナルストーンが残されている例は大変希少です。
中世の宝石誌において、宝石は現代の鉱物学のように厳密な種類で分類されるのではなく、
その色、輝き、産地、そして秘められた効能によって理解されていました。
11世紀末、レンヌの司教マルボドゥスによって著された『石の書(Liber lapidum / De lapidibus)』には、
宝石に宿る神秘的な力が記されており、赤い石は火や生命力、守護の象徴と考えられていました。
ガーネットに連なる赤い石もまた、悲しみを払い、旅人を守る石として語られています。
また、ベゼルはフランス中世美術に見られる盾の形をしているのも特徴的で
このような繊細な作りの中世リングは長い年月の中で指輪そのものの形が変形してしまっていることも少なくありません。
その中で、本品はベゼルの形、リング全体のバランスともに美しく保たれており非常に良好なコンディションを保っています。
簡素でありながら力強く、金の質感、ガーネットの深い色、
そして盾形のフォルムからも中世らしい静かな存在感を放っています。
祈り、護符、身分、あるいは愛情のしるしとして身につけられていたかもしれない小さくも非常に雰囲気のある中世リングです。
写本の挿絵に描かれる宝石や指輪を思わせる13〜14世紀フランスの美意識を今に伝える貴重な一点です。
12世紀後半より使われた盾の形状
アキテーヌ美術館 13世紀 騎士像より

13世紀〜14世紀 指輪
大英博物館
13世紀中頃の写本に描かれた宝石と指輪の記録。
マシュー・パリスによって制作されたこの写本には、セント・オールバンズ修道院の宝物庫に納められていた宝石やリングが図入りで記されています。
中世において、宝石や指輪は単なる装飾品ではなく、信仰や身分を示すと同時に、
持ち主や寄進者、贈られた背景を物語る特別な品でした。
また宝石にはそれぞれ固有の効能や守護の力が宿るとも考えられ身につける人を守り、
心身に作用するものとして大切にされていました。