1950年〜1960年頃 Monture Cartier カルティエ エメラルド&ダイヤモンド ブローチ
瑞々しい三枚の葉を束ねた1960年代頃のエメラルドとダイヤモンドのブローチです。
細くしなやかなゴールドの線を幾重にも重ね、葉脈のように広げた立体的な造形。
その中央には鮮やかなグリーンの美しいエメラルドが配され、輪郭を縁取るダイヤモンドの白い輝きが、
深い緑とイエローゴールドの色彩をいっそう引き立てています。
三枚の葉はそれぞれわずかに角度を変え、内側から膨らむような、ふっくらとした立体感を持たせて仕立てられています。
細いゴールドの線の間から光が抜けることで繊細な陰影が生まれ柔らかな表情を見せます。
裏側には『MONTURE CARTIER』の署名と、製作管理番号とみられる『N 9473』の刻印が残されています。
「MONTURE CARTIER」は、顧客が所有する宝石を用いてカルティエが特別に仕立てたオーダージュエリーに見られる署名です。
当時は、大切に所有していた宝石をメゾンへ持ち込み、その石に合わせてジュエリーを仕立てる特別注文も行われていました。
アンティークジュエリーを見ていると、代々家族に受け継がれてきたジュエリーが、
その時代や新たな持ち主に合わせて仕立て直されたものに出会うことがあります。
たとえば、一本のネックレスに留められていた複数の宝石を姉妹で分け、
それぞれ新しいジュエリーへと仕立てたり、使われなくなった古いジュエリーから石だけを受け継ぎ、別のデザインへと生まれ変わらせることもありました。
そうして受け継がれた宝石をメゾンへ託し、その石のためだけの新しいジュエリーを注文する。
そんな背景を思い浮かべると「MONTURE CARTIER」という小さな刻印からも、石そのものが歩んできた時間や、
かつてそれを手にした人々の物語が感じられるようです。
誰のために、どのような思いを込めて注文されたのでしょう。
半世紀以上を経た今も「MONTURE CARTIER」の小さな刻印は、
このブローチが誰かのために特別に仕立てられた一品であったことをそっと伝えてくれます。
美しいエメラルド、端正なダイヤモンド、そして豊かなイエローゴールド。
華やかな造形の美しさだけでなく、かつてこのジュエリーを注文した人物の存在まで思い描かせる物語を秘めた特別なブローチです。