18世紀後半、フランスの上流階級の間で大変流行した
Bague au Firmament(バーグ・オ・フィルママン)と呼ばれるリングです。
直訳すると「天空の指輪」を意味するこのリングは
1781年の王太子誕生を機にフランス王位継承者の待望の誕生を祝うために
フランスの宝石商によってデザインされたと言われています。
天空の指輪はその名の通り夜空を映したような濃紺が最も代表的ですが、
紫、暗い赤紫、緑、黄色、赤といった様々な色彩のバリエーションも存在しました。
このリングは一見すると黒に見えるほど濃く深い紺色のガラスが用いられており、
1781年の王太子誕生を機に宮廷内で人気を博したこのスタイルの高貴な趣を今に伝えています。
王妃マリー・アントワネット自身もこのスタイルを非常に愛し
1785年にアドルフ・ウルリク・ヴェルトミューラーによって描かれた肖像画の中でも、
その指先に「天空の指輪」が輝いているのを確認できます。
『トリアノンの庭園を歩くマリー・アントワネットと二人の子供たち』
アドルフ・ウルリク・ヴェルトミューラー
1785年
スウェーデン国立美術館
1785年に描かれたヴェルトミューラーによる肖像画(スウェーデン国立美術館蔵)の中にも、
マリー・アントワネットの指先に『天空の指輪』が描かれています。
中央のダイヤモンドを囲むように広がる優雅なナヴェット型のフォルムは指を細長く美しく演出します。
リング本体は18kでできており、ローズカットダイヤモンドはシルバーでセットされています。
ローズカットダイヤモンドはカット面の面積が広いため、光を反射した際に放たれる輝きが非常に力強いのが特徴です。
石の裏側を金属で覆い内部にフォイル(薄い金属箔)を敷き詰めた
クローズド・フォイルバック・セッティングにより、
キャンドルの揺らめく光を捉えては神秘的で奥行きのある反射を生み出します。
18世紀のこのタイプのリングは後年にアーム部分が作り替えられているものも少なくありませんが、
本品はすべてが制作当時のまま残されている極めて希少なオリジナルコンディションです。
ブルーグラスの一部に経年による欠けが見受けられますが
240年以上の時を経た18世紀のリングとしては、十分に許容範囲内と言える標準的なコンディションです。
1785年にパリで創刊された世界初のファッション誌『Cabinet des Modes』。
その1786年7月15日号の図版には、本品と同型のナヴェット型リングが数多く紹介されています。
フランス革命という激動の時代を経て現存する個体は少なく、市場に出ることは非常に稀なリングです。
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