ルネサンス 大詩人ダンテ と 聖ジョージ の ダブルフェイス カメオ&インタリオ
1580年〜1620年頃のダブルフェイスのカメオ&インタリオ、
これは表面にはカメオが、裏面にはインタリオが彫られているとても珍しい作品です。
年代の古さに加え、更にダブルフェイスであることで、表裏に選ばれたモチーフは何なのか?を考えていくことの出来る、
とてもアンティークらしい面白みに溢れた希少な作品なのです。
現在はクラバットピンに仕立て直されていますが、本来は素晴らしい装飾のフレームにセットされ、メダイヨンとして、持ち主の首に飾られていたことが想像できます。
ルースのみの場合、家具などに留められていた可能性もありますが、両面ですから、メダイヨンであったか可能性が高いでしょう。
まず、表面のカメオに彫られている男性は力強い独特な鼻を持っていますが、ここまで特徴のある顔立ちは特定の人物の特徴を示したポートレートのようで、明らかにモチーフとする人物がいたことを示しています。
モチーフが誰なのか?ですが、その人物が身につけているものでわかる場合が多いです、例えば、鎧をつけていませんから戦士でもありません、そして、大きな 帽子もかぶっていませんから、教皇でもないでしょう。頭に布のようなものを巻いていますが、これは哲学者や詩人を表す時のシンボルですから、哲学者か詩人 のようです、ただ、これだけでは人物がわからないので、わざわざカメオとして作らせて身につけたいと思う程の強い影響を与えられる人物を調べてみたとこ ろ、この横顔に酷似した、とても有名なイタリア出身の人物をみつけました、それは大詩人ダンテです。
ダンテは霊感を与える偉大な存在として芸術作品にも多く登場しています、人物の特徴をはっきりと示すカメオを彫るには、彫刻師にも資料が必要ですから、資料を見ることの出来る可能性があったかどうかも重要です。
ダンテはデスマスク(右)が残っており、ルネサンスの画家ボッティチェリにもダンテの姿がとても良く似た姿で描かれている(中)ことがわかります。
このカメオが頭に身につけている細長い布ですが、これが、アゲートの層を実に美しく生かしており、このカメオの見せ場の一つでしょう。哲学者、詩人を表すシンボルの一つです。
右 古代ギリシャの詩人 ホメロス
左 17世紀の、古代ギリシャの詩人を表した彫刻
そして、裏面に彫られているのは、聖ジョージです。
(この写真ではわかりにくいので、また改めて写真を撮影致します)
表面のダンテのカメオに比べて、裏面の聖ジョージのインタリオの彫りが軽いものであるのは、この裏面のインタリオが人に見せるものではなく、極めてプライベートな意味を持つものとして彫られた可能性が二つあります、例えば、
このメダイヨンの持ち主が名前がGiorgio(イタリア名)であること、これは、彼の守護聖人が聖ジョージであったことを示しており、自分の守護聖人を彫らせて自分側に向け、より強い守護のを願った可能性です。
もう一つは、聖ジョージは竜を退治する聖人ですが、この竜は悪魔を表しているので、魔除けの意味があった可能性。
こうして、彫刻部分を紐解いていくと、このメダイヨンが今から数百年前に、どのような目的で作られて、身につけられていたのか、それに肉迫してゆくことが出来るのです。
この作品は現在はクラバットピンに仕立てられていますが、本来は、、、
このような素晴らしいフレームにセットされていた作品です。
この作品が、どのようなフレームにセットされていたかを想像するのも楽しいひとときです。
イブサンローランコレクションより。
この作品も両面に彫刻が施されているダブルフェイスの作品です。
半透明の茶系の層のアゲートを巧みに使ったカメオ、
そのまま眺めても光に透かしても楽しめる美しい作品です。
このカメオの見せ場は、頭に巻いた細長い布部分でしょう、石の模様と一致しています。
1580年〜1620年のルネサンスを生きた、どんな人物が身につけていたものなのか?持ち主を強く想像することが出来る夢溢れる作品です。
裏面から光を透かしてもとても綺麗です。