中世 ゴールド リング
類い稀な中世のゴールドシグネットリング、丸いベゼルに鳥が彫られ、回りにはセミアンシャル体で + S.SOVIEN BEC と刻まれています。
+は神を意味し、S.はラテン語でSIgillum=印章を意味します。そしてSovien Becとは持ち主の名前です。持ち主は鳥を家族のモチーフとして使っていますが、これは鳥のくちばしが仏語でBecであることも関係していると思われます。
私たちが書類に印鑑を使うようにこの指輪の持ち主も自分の印章としてこの指輪を使っていました。その為にシグネットリングと呼ばれている指輪です。
中世の指輪は現存する数が極めて少なく、そしてこの指輪はその中でもトップクラスの出来映えの大変素晴らしい指輪なのです。
文字の最初の神を表す + は、持ち主がこの印章を使う時、神も持ち主と共にある、という意味合いをもち、この印章が使われた物を清める効果があるとされていました。
そして、このリングはノルマンディー地方の作品と推定されますが、その理由はこのBEC にあるのです.....。その理由を皆さんと一緒に探っていきたいと思います。
Bricquebec という名前の中世の都市が北フランスのノルマンディー地方にあります。
このBricquebecは中世の城を始めとした建築物が今も残っている趣のある美しい地域です。Bricquebecで検索して頂ければ中世の建築物が見られると思います。
そして、この地の中世の大修道院はBEC-HELLOUINと呼ばれ、ここにもBECという名が見られます。
BECという名前がとても良く見られるノルマンディー地方、おそらくこのリングはノルマンディー地方のものだと推測されます。
古い年代の指輪はその指輪についていろいろ調べている間に、現代に生きる私達を過ぎた過去へとタイムスリップさせてくれる素晴らしいドリームピースなのです。
この指輪が光を反射して、金が輝いた時に刻印部分が浮き上がるのがまた雰囲気があります。
家の紋章ではなく鳥のモチーフをフランス語でくちばしを表すBECという言葉に合わせて選んでいるところに、、、何か柔らかさを感じます。
刻印部分のアップ。くちばしが強調してデザインされていますね。
拡大すると手彫りであることが良くわかります。
Bec部分のアップ。ノルマンディー地方と推測する理由の名前です。
シャンクにも一周くるりと装飾がびっしり手彫りで彫られています。素晴らしいですね。
拡大写真、もちろん手彫りです。
反対側。
裏面。
ベゼル裏面。
粘度に押した画像です。この印章を押すとこのような装飾が現れます。
このリングと同タイプのリングです。
14世紀後期〜 15世紀、おそらくポルトガル。
この指輪は私たちの顧客の一人、世界的に有名なコレクターMr Michael Estorick esq.氏が所有する指輪です。
参考文献 Diana Scarisbrick, Rings, 2007, n° 35
参考資料 Diana Scarisbrick, Historic rings 2004,No124