13世紀 トゥールーズのテンプル騎士団のバックル
この銅製のバックルは1230年〜1250年頃のものです。
中心に左右で装飾が全く違う模様が表現されていますが、これは二つのシンボルが一つになった事を表しています。ではどんな模様が一つになったのでしょう?
これは美しく気高い精神を持っていた人物が身に着けていたバックルなのです。。。
この左右に配置したそれぞれの古いクロスはこのバックルの左右の模様と同じデザインです。それぞれが半分づつ組み合わさり、このバックルの印なっているのです。
クロスの模様は紋章学において基本的な図形のひとつであり、そのバリエーションは非常に様々で約500もの種類があるとされています。
前の画像で左側に掲載していたクロスはトゥールーズのクロスです。
馬に乗った人物の印章はレーモン7世・ド・トゥールーズ(Raymond VII_de_Toulouse de Toulouse)のもの、盾にこのクロスと同じ紋章が表現されているのがわかります。
そして、もう一つのクロスは有名なテンプル騎士団のクロスです。
一つの馬に二人の人物が乗った印章はテンプル騎士団のもの、主に代12代総長ジルベール・エライユ、巡察使ユーグ・ド・ペローがこの図柄の紋章を用いていました。
一つの馬に二人の騎士が乗っている印章はとてもユニークですね、多くの印章に意味があるように、この印章にも意味があります。
これはテンプル騎士団1人が1頭の馬を持つ事が出来なかったという清貧の精神、又は清貧の精神の誓いを思い出させる為、そして騎士であると同時に修道士で もあるという二重性を表現しているのです。中世最強の騎士団、テンプル騎士団については現在でも多くの謎や歴史、逸話が残り、人々のインスピレーションを 強く刺激する存在でしょう。
この絵は左が騎士で右が修道士です。これはテンプル騎士が、騎士であると同時に修道士であった二面性を表しています。
騎士は貴族出身に限られ、騎士は白に赤い十字のマントを羽織り、騎士見習いは黒いマントとされていました。
この写本はテンプル騎士団の会則の一部です。
「みずからの意志に従うことを蔑み、純な心を持って至高の王に騎士として使える事を欲し、あくまでも服従という気高い鎧を鎧を身に着けたいと一心に願うすべての者に次ぐ」
と書かれています。この会則には修道士としての禁欲、総長への絶対服従、及び各人の義務を基礎として騎士達の生活を規定しています。
これはテンプル騎士団に新しい騎士を迎える際の儀式の版画。
「はい、猊下、全ては神の御心のままに」
騎士はこの入会の儀式で清貧、貞潔、従順を誓います。
歴史家、ジョルジュ・ボルドノーブによって忠実に再現された入会の儀式の様子は感動的で美しさに溢れた内容になっています。。。
少し長いので興味のある方はお問い合わせ下さい。
二つのクロスの組み合わせ、スタイルからこのバックルがトゥールーズのテンプル騎士団の装身具で有ったことがわかります。
トゥールーズのテンプル騎士にとって、このバックルは自分の所属を表す装身具だったのです。
13世紀のトゥールーズのテンプル騎士がこのバックルを身に着け、自分の欲を捨て神の農奴として神の御心のままに生きていた事を思うと、清々しい感動を覚えます。
そして歴史的資料価値の高い美術館レベルの作品です。
薄い作りです。
裏面。
中世の騎士の美しいレリーフです。