中世 14世紀〜15世紀 振り香炉
ゴシック建築的な装飾が施された中世14世紀〜15世紀のフランスの教会で使われていた稀少な聖なる振り香炉です。美術館にあるべき品物がこうして目の前にあることにとても感動します、同タイプの作品がパリのクリュニー中世美術館に所蔵されています。
正教会の司祭達は香炉に乳香を焚き、長い鎖をつけて大きく振り、香炉から立ち上る白い煙のように、祈りが神に届くことを祈って用いていました。現代の教会でもこのような香炉が実際に使われている様子を見ることが出来ます。
振り香炉のイラスト、香炉の中から煙りが出ています。
こうして、振り香炉から上へ上へと細く立ち上る乳香の煙が神へ届くようにと祈りと共に使われていたのです。
乳香とは植物から採れる樹脂のこと。
乳香の起原は古く、古代エジプトの墳墓から埋葬品としても発掘されています。
そして、東方の三博士のキリストへの捧げ物の中にも乳香が含まれていました。
中世の教会で実際に使われていた本当に貴重な振り香炉です。
手にとって目をつぶれば、当時の聖なる祈りが過去から現在へこの香炉を通して伝わっているような気持ちになります。
この香炉を使っていた中世の司祭達も、この香炉が数百年もの長い時を生き残り、こうして愛でられる事など想像もしていなかった事でしょう。
そして、それは未来にも言える事なのです。なぜなら現在の所有者である私も、この香炉にこれからどんな運命が待っているのか分からないのですから。
数百年間、壊されることなく生き残ってきたオブジェですから、これから先もきっと長い間存在してくれるのだろうと祈っています。
この香炉そのものが小さなゴシック建築のようですね。
この小さな×印は、香炉の蓋の向きを合わせる為のものでしょう。
こうした小さな使用後の一つ一つに愛しさと感動を覚えます。
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