舞踏会のヴィネグレット
19世紀初期の華やかな舞踏会で貴婦人が身につけて踊ったエレガントな小物、指輪付きのヴィネグレットです。
このヴィネグレットを使っていたような当時の上流階級の女性達は、ウェストを細く見せるために、かなり強い力できつく締め上げたコルセットで内蔵の位置がずれるほどの身体的な負担をおっており、特に舞踏会などでは、無数のロウソクの炎による暑さなどで、気分が悪くなったり、失神する女性がいたそうです。
そんな時に使ったのがこのヴィネグレットです、ヴィネグレットは中が開くようになっていて、内側に強い香料や鼻にツンとくる酢酸をしみ込ませた綿や布を入れられるようになっており、気分が悪くなった時にヴィネグレットを開けてその香りで気分をリフレッシュさせたり、意識を取り戻す為に使いました。
ですが、このヴィネグレットは、本当に気分が悪くなった時以外にも使われました。例えば、意中の異性と話しをするきっかけを作る為に、わざと弱々しく失神するふりをして、介抱してもらう時に使う重要な小物でもありました。<br />
恋の相手にアプローチする時に使う小物でもあった為に、洗練された美的感覚や経済力を見せられるよう、華やかで美しい装飾が施されているのです。
ヴィネグレットにはいろいろな形があり、男性が使うものもありますが、今回ご紹介するヴィネグレットは鎖で指輪とつながっています、これは貴婦人が舞踏会で踊る時に指にはめて使っていたタイプのものです。
ヴィネグレットにはカラフルにエナメルで飾られたものもありますが、これは金のみの輝きを生かしたタイプです、素晴らしい打ち出しの金細工がとても華やかで、指につけると鎖がシャラシャラとしなやかに動きます。
中には、古い海面が入っていますが、もしかしたらオリジナルの海面かもしれません。
とても希少なアンティークならではの、大変面白く美しい作品。
当時の上流階級の美的感覚、遊び感覚を感じられることができる逸品です。

素晴らしい打ち出しの金細工。

細工拡大。

中を開けると、このようになっています。

この中フタの透かし細工も大切な細工でした。
フタを開けたときに、パッと華やかな細工を見せる必要があったからです。

中フタをあけると、綿や布が入れられるようになっています。
このヴィネグレットには海面が入っていましたが、もしかしたらオリジナルの海面かもしれません。

内側には羊のホールマークが打ち込まれています。

フタ裏。

ふっくらとした鎖もとても丁寧な作りです。

指輪部分も大変美しい金細工が施されています。