古代ローマ2世紀〜3世紀 牧神パンのニコロ インタリオ リング 野山と酒宴の気配をまとう牧神パン

灰色がかった青と黒に近い紺色の2層のニコロに自然の神パンが彫り込まれた古代ローマのインタリオです。
石の中には、牧杖ペドゥムを手にし今にも音楽にあわせて動き出しそうな牧神パンの姿が表されています。
緻密な彫りによって頭部には2本の角が刻まれ、下半身は山羊を思わせる動物的な姿で表現されており、山羊皮の衣ネブリスをまとっています。
パンは野山、牧畜、森、そして野生の生命力を司る神であり古代世界においては自然そのものの力を象徴する存在でした。
さらに興味深いのはパンの手に表された小袋状の持物です。
これはヘルメスが持つ財布にも似ていますがパンが財布を持つ姿で描かれることは通常少なく、
この持物はむしろ動物の皮で作られた袋、すなわち水や酒を持ち歩くための皮袋と見ることもできるでしょう。
牧畜や森、ディオニュソス的な酒宴の世界とも深く結びつくパンであることを踏まえるとこの袋にはワインが入っていたとも想像したくなります。
そう考えると、このインタリオに表されたパンは単なる牧神にとどまらず、野山を歩き、酒と音楽と生命力をまとった、
より古代的で豊かな存在として浮かび上がってきます。
牧神パンを主題とするインタリオ自体が珍しく皮袋を手にしたこの生き生きとした姿には野山と酒宴の気配を漂わせる独特の魅力があります。
石はニコロ特有の青みを帯びた層が美しく黒い外縁の中に浮かび上がるパンの姿は、
まるで夜の森や神話の世界から現れたかのような雰囲気を醸し出しています。
インタリオは古代ローマ、2〜3世紀のもの。リングは現代の作りで18kとして仕立てられており、
古代の小さな神話世界を日常に身につけることができる一点です。

インタリオを粘土に押した画像です。
金や銀で型取りしてリングやペンダントにも加工することができます。
参考作品:
《Marble statue of Pan》
ローマ、1世紀
The Metropolitan Museum of Art, New York
この像では、山羊の脚・角・尾を持つ牧神パンが、かつて容器あるいはワイン袋を左肩に担いでいた姿で表されています。
本作のインタリオに見られる小袋状の持物も、パンにふさわしい皮袋、あるいはワイン袋として想像することができます。
参考作品
作品名:《Nymphs and Satyr》
作者:William-Adolphe Bouguereau
制作国・年代:フランス、1873年
収蔵:Clark Art Institute, Williamstown