古代ローマ 紀元前50年〜紀元50年頃 神々の境界を越えるケンタウロス インタリオ リング

黒と半透明の蜂蜜色の層が美しく重なる縞瑪瑙に半人半馬の神話的存在ケンタウロスが繊細に彫り込まれたインタリオです。
このつややかで美しい縞瑪瑙は想像力を掻き立てる石で、
石の中心を横切る白い層は、まるで人間の世界と神々の世界を隔てる一本の境界線のようです。
古代神話の世界では神々は時に人間の住む地上へと降り立ち、人間に知恵や美、芸術をもたらしました。
この石に刻まれたケンタウロスもまた、そうした神話世界からの使者のように見えてきます。
彫られたケンタウロスは一方の手に果樹あるいはオリーブの枝と思われる植物を、
もう一方には月桂冠を携えています。
月桂樹はアポロンに深く結びつく植物であり、音楽・詩・芸術、そして勝利の象徴でもありました。
古代世界ではアポロンに捧げられた音楽や詩の競技会において勝者に月桂冠が授けられたと伝えられています。
だとすれば、このケンタウロスはアポロンの世界から美と詩をこの地上へ運び、
芸術における勝者を祝福する存在として刻まれたのかもしれません。
本品に刻まれたケンタウロスは月桂冠を携える優雅な姿から、
知恵と音楽、教育に結びつくケイローンを思わせます。
ケンタウロス中でただ一頭、賢者として別格の名声を得たのがケイローンでした。
彼はアポロンに育てられた養い子とされ、音楽・医術・予言といった技を授かり、
気高く教養ある存在へと変わったと伝えられています。
ケイローンはやがて自らもアキレウスをはじめとする数々の英雄たちの師となりました。
希少な縞瑪瑙と古代世界ならではの神話的主題。
その二つが響き合う非常に印象的な古代ローマのインタリオです。
現在は18Kゴールドのリングに仕立てられ、二千年の時を超えた石を、
現代のジュエリーとして日常の中で楽しんでいただけます。
粘土に押した画像です。
バランスの取れた美しい彫りであることがわかります。
《ケンタウロスのケイロンがアキレウスに竪琴を教える場面》
古代ローマ壁画、1世紀後半頃
ヘルクラネウム出土
ナポリ国立考古学博物館蔵
カピトリーニ美術館所蔵 ケンタウロス像
アリステアスとパピアス作
ハドリアヌス帝時代、117〜138年頃