《L'Amour réduit à la raison》 ピエール=ポール・プリュードンに基づく 19世紀 アゲートカメオダイヤモンド ブローチ
18金イエローゴールドに楕円形のアゲートカメオをセットした1850年頃の美しいカメオブローチです。
カメオには新古典主義からロマン主義へと移り変わる時代に活躍したフランスの画家
ピエール=ポール・プリュードンによる《L’Amour réduit à la raison》
「理性に従わされる愛」の場面が表されています。
《L’Amour réduit à la raison》は、感情や欲望としての愛が、知恵・理性・節度によって
導かれるという寓意的な主題です。
原典となる版画では左に知恵と理性を象徴する女神ミネルヴァと思われる胸像が表され、
愛の神アモルの翼を鎖で繋いでいます。
中央ではアモルが引き寄せられ、右側の女性はその愛を惜しむように手を差し伸べています。
まさに、情熱としての愛が理性によって制御される瞬間を図像化した作品です。
愛を否定するのではなく盲目的な情熱を知性と節度によって高めるという、
18世紀末から19世紀にかけて好まれた優美で哲学的なテーマが込められています。
6 × 5 cmという大型の見応えのあるカメオで
胸元に添えた際にも存在感があり格調と華やかさを感じさせます。
アンティークのカメオには神話や寓意を題材としたものが多く見られますが、
実際にその原典や題材を特定できる作品は決して多くありません。
本作のようにプリュードンの版画に基づく場面であることがわかるカメオブローチは希少であり、
装飾品としての美しさだけでなく美術史的な魅力も備えています。
白く浮かび上がる人物表現は柔らかく女性の衣の流れやアモルの愛らしい姿が
アゲートの落ち着いた地色の上に緻密な彫りで繊細に表現されています。
特に衣のひだや髪の流れ手先の表情にいたるまで丁寧に彫り込まれており、
小さな画面の中に物語性と優雅な動きが感じられます。
実物は画像で見るよりもさらに立体感があり、
カメオ彫刻ならではの奥行きと柔らかな陰影をより豊かに感じていただけます。
カメオを囲むゴールドのフレームは、月桂樹を思わせる優美な意匠です。
月桂樹は古代以来、勝利・栄誉・秩序・知性を象徴する植物として用いられてきました。
そのため、この月桂樹風のフレームは「理性が愛を包み込み、導いている」
という本作の主題とも美しく響き合っています。
作品の寓意がカメオの図像だけでなくジュエリー全体の設計にまで反映されているように感じられる、
非常に魅力的な構成です。
フレームにはローズカットおよびオールドカットのダイヤモンドが丁寧にあしらわれ、
古典的な気品と華やかさを添えています。
裏面には、後の年代に取り付けられた取り外し可能な金具が備わっており
ブローチとしてだけでなくペンダントとしてもお楽しみいただけます。
ゴールドの太めのチェーンやシルクコードなどに下げてお使いいただけます。
神話的な主題、プリュードンに由来する芸術性、緻密なカメオ彫刻、
そして19世紀半ばの宝飾技術が調和したアンティークジュエリーならではの格調高い作品です。

参考作品:
《L’Amour réduit à la raison》は、1793年にPierre-Paul Prud’hon (ピエール=ポール・プリュードン)が制作した素描に基づき、
ジャック=ルイ・コピアが版画化した作品です。
この版画作品は、リヨン美術館 フランス国立図書館(BnF)
およびルーヴル美術館版画素描部門 Edomond de Rothschild コレクションに収蔵されています。
《L'impératrice Joséphine (1763-1814)》
作者:Pierre-Paul Prud’hon
制作年:1805年
Musée du Louvre, Département des Peintures(ルーヴル美術館 絵画部門)

