古代ローマ1世紀〜2世紀 ニコロ インタリオ オモノイア
古代ローマ1〜2世紀頃に作られた、オモノイア(調和・一致)のニコロのインタリオです。
ブルーグレーと柔らかな艶やかな半透明の濃い茶色の2層の石に二つの右手が固く結ばれています。
この dextrarum iunctio(右手の結合)は、
ローマ世界で結婚や同盟、契約、友情、そして共同体の調和を表す最も大切なジェスチャーでした。
古代ローマの人々にとって右手は大変特別な存在で、
右手には誠実さや信頼(fides)が宿るとされ、誓いや契約は必ず右手で行われました。
左手は縁起がわるいものとされ、
第二次ポエニ戦争で右手を失い、鉄の義手を使ったにもかかわらず、
儀式に参加できないという理由で政治的な職を拒否された
マルクス・セルギウス・シルス(Marcus Sergius Silus)将軍の逸話も右手の重要性を示しています。
そのため、硬貨にもこの右手が象徴として頻繁に登場し、ローマ人の価値観を静かに物語っています。
結婚式では既婚女性が新郎新婦の右手を結び合わせ、家庭の誕生と和合(Concordia)を示しました。
また皇帝夫妻の結婚を帝国に知らせるため、硬貨にはこのジェスチャーが繰り返し描かれ、
王朝の安定と調和を視覚的にも伝えています。
実際の結婚が不仲であった場合でさえ、硬貨は「和合」を示すためにこのモチーフを選びました。
右手の結合は結婚に限らず、人と人、都市と都市、皇帝と軍の結びつきを象徴するためにも使われました。
それは、約束、協調、忠誠の象徴であり、ローマ世界で心をひとつにする行為そのものだったのです。
さらにこのインタリオには、小さな小麦の穂が添えられています。
豊穣を司るケレスの象徴であり、結びつきが“実り豊かなものとなるように”という祈りが込められています。
右手の結合と穂を組み合わせた意匠は珍しく結束と繁栄を願うローマ人の思いがそのまま表れています。
青い層が光の加減でやわらかく浮かび上がるニコロ石に、古代の人々が大切にした精神がそっと宿るインタリオです。



リング加工例
ブルーグレーの落ち着いた色合いはゴールドなどと相性がよく
ジュエリーに仕立ててもシックで美しくまとまります。
豊かな結びつきや和を願うインタリオですのでお守りにも良いと思います。