ギリシャ南の地中海に浮かぶクレタ島は
温暖な気候に美しい景観から観光地としても人気のある島です。
数年前にクレタ島に訪れたことがありますが、
この美しい島にはクノッソス宮殿と呼ばれる有名な古代遺跡や、
出土した美術品を収めた美術館などがあります。
クレタ島に由来する美術品は極めて希少で滅多に市場には出てきませんので、
美術館にあるようなクレタ島の美しいお品物を
こうして扱えることが出来て大変嬉しく思っております。
クレタ島 地図
クレタ島から発掘されたこの作品は
パリの古代美術商 jean philippe mariaud de serres のコレクションでした。
表面が美しく磨かれた艶やかな半透明のオレンジ色のコーネリアンに
上半身が牛、下半身が人間の幻獣が彫り込まれています。
作品を見ただけでは彫りが分かりにくいですが、
粘土に押すとよく分かります。
こちらはインタリオ を粘土に押した画像です。
牛の頭が下を向いており、ジャンプして背中が反ったような、
大変アクロバティックなポーズが彫り込まれています。
クレタ島の古代美術品には牛をモチーフにしたものが多く発掘されており、
このようなダイナミックなポーズのものが見つかっています。
クレタ島 クノッソス宮殿の壁画
クレタ島では 牛飛びの儀式 と呼ばれる宗教的な儀式があったと言われており、
それを表した壁画なども出土しています。
空中で回転して牛の背に乗っているような動きで
大変危険ですが、重要な儀式だったようです、
牛飛びに参加する者たちにとっては、
晴れの舞台で自分の力を試す意味もあったのかもしれません、、、
壁画の他には、、、
クレタ島 牡牛のゴールドリング
牛飛びの儀式の装飾のゴールドリングも出土しています。
貴重な金を惜しみなく使ったリングは高位の人物の持ち物であったことでしょう、
当時、牛飛びの儀式がどれほど重要であったかが、
改めて伝わってくるようなリングですね、
牛の顔の表現も、今回のインタリオと似ています。
牛飛びの儀式 イメージ図
こちらは牛頭のリュトン、
大変立派な出来栄えで、こちらも儀式に用いられたものなのでしょう
ステアタイト、ジャスパー、そしてマザーオブパールでできています、
牛の顔に刻まれた模様、、、素晴らしい表現力に圧倒されます。
GREEK GEMS AND FINGER RINGS 掲載
類似作品
ミノアの人々の表現力の素晴らしさは、他の出土品にもよく現れています。
クレタ島 タコ文様の壺
壺の丸い形を利用して、タコの顔を中央に描き、
足が壺を埋めるように縦横無尽に伸びています。
のびのびした表現に海洋のおおらかさを感じます。
蛇の女神像
頭に獅子を乗せて、両手には蛇を掴んでいます。
乳房を出し、キュッと絞られた腰とふわっと広がるスカートが女性らしいラインです。
地母神と考えられますが、
丸くふくよかな地母神像が多い中で、例外的なスタイルと思います。
古代ギリシャ神話に怪物ミノタウルスの話がありますが、
その舞台はクレタ島です。
20世紀初頭、クレタ島のクノッソス宮殿の発掘が進むに連れ、
クノッソス宮殿内部の迷宮のような構造が明らかになりました、
そして至るところに牛の装飾品、牛の壁画が飾られていたそうです。
古代ギリシャ人がクレタ島を訪れた時、
迷宮のような宮殿といたるところに飾られている牛の装飾品に目を奪われ、
迷宮に住む怪物ミノタウルスのドラマティックな
神話が生まれたのかもしれません。