Alonso Sanchez Coelo - Infanta Isabella Clara Eugenia 1586
ルネサンス時代、王侯貴族達は自らの高い地位や権力、富を示す為に積極的に肖像画を描かせていました。
彼らは肖像画の中で威厳のある姿で表現され、
当時とても希少であった ダイヤモンド、エメラルド、サファイヤ、ルビーなどの宝石や
自然の恵みの天然真珠などをあしらったジュエリー、
レースや絹、金糸銀糸の刺繍で飾られた豪華な衣装や帽子、ヘッドドレスを身にまとった姿で描かれています。
貴族達の肖像画は殆どが注意深く写実的に描かれているので、
当時の彼らの姿を詳しく知ることが出来ます。
Alonso Sánchez Coello, Infanta Isabella Clara Eugenia, 1579
彼らが素晴らしいジュエリーを身につけているのは勿論、
ドレスにも直接宝石が縫い付けられていることが分かります。
この小さなパーツはロゼットと呼ばれるもので、
ドレスの色やデザインに合わせて用意されたものでした。
服に縫い付けるロゼットは複数作る必要があり、
高価な宝石や真珠が多く必要でした。
このような夢のように贅沢な衣装を身にまとうことが出来たのは
貴族の中でもさらに飛び抜けて裕福で力のあった人々のみでした。
Juan de la Cruz, Isabelle de Valois, Madrid
このロゼットはドレスの縫い目にそってつけられたり、
布の模様にのように等間隔で縫い付けられたりしていました。
今回ご紹介する宝物は、ルネサンスの貴族達がドレスに縫い付けていたこのロゼットです。
今は小さなブローチに仕立てられ、後の時代に作られた美しい箱に入れられています。
どのような美しい衣装に合わせて縫いつけられていたのか、、、ルネサンス時代の貴族の肖像画を見ながら
思いを馳せるのは素晴らしく贅沢なひと時になることでしょう。
この美しいロゼットには、当時大変希少であったテーブルカットダイヤモンドが5つも留められ
中心のダイヤモンドの大きさは約1ct もあります。
ロゼットはドレスに縫い付けるものですので、10個、20個と数を揃えなくてはいけない必要がありましたから、
本当に力のあった貴族が作らせたロゼットであったことがわかります。
また、この年代のダイヤモンドはほぼ全てがゴルコンダのダイヤモンドでした、
ゴルコンダは歴史的に有名なコーイヌールやダルヤーイェ・ヌール等のダイヤモンドが産出された地でもあり、
希少な古のダイヤモンドの鉱山として大変有名でロマン溢れる地です。
温かみのあるゴールドには樹木を思わせる彫金と
ホワイトとオレンジのエナメルが施され、
両脇にはこちらも当時希少であった天然真珠が二つ留められています。
この美しい宝物はルネサンス時代のジュエリーですから
小さくても抜群の雰囲気の良さを醸し出しています。
アンティークのゴールドチェーンなどに合わせてコーディネートしても
素晴らしい美しさを感じます。
ルネサンスの同時代の宝飾品を見ると、
今回ご紹介しているロゼットと、デザインや作りに類似点が見つかります。
裏面の作りなど大変よく似ています。
宝石の留め方、全体のデザイン、エナメルの雰囲気なども大変良く似ています。
他のロセット例
ダイヤモンドはボックス型で高さのある台座に留められており、
立体感を感じる作りです。
ブローチピンは後の時代に作られたものになります。
このルネサンスのロゼットは今はブローチとして仕立てられ、
ブローチの形に合わせて作られた赤いケースに入れられています。
ルネサンス時代の選ばれた特権階級のみが身につけることが出来た宝物です、
ドレスに直接縫い付けて使っていたロゼットは大変希少ですし、
小さな美しいブローチとしてお使い頂けるようになっておりますので、
お好きな方には大変お勧め出来る価値あるお品物です。