17世紀のハート形ベゼルのラピスブルーエナメルリング、
17世紀、ハートのベゼル、ステップカットダイヤモンド、ラピスブルーエナメル.....
この組み合わせのリングは今までに見たことがなく、
本当に例外的で希少な、愛らしいデザインだと思います。
感覚的にはフランスのお品物なのかな?と思いますが、
あまりに例外的すぎてヨーロッパのどの国で作られたのかは分かりません。
ハートのベゼルは、このリングが愛の贈り物として作られたことをはっきりと示しています、
厚みのある澄んだ美しいテーブルカットダイヤモンドがセットされていますが、
透明で硬く壊れにくいダイヤモンドがセットされているのは
変わらない純粋な愛を表しているようですね。
17世紀では、まだブラジルでダイヤモンドが発掘されておらず、
ダイヤモンドの殆どはインドのムガル帝国、ゴルコンダのダイヤモンド鉱山からの産出でしたので、
恐らく、このダイヤモンドもゴルコンダのダイヤモンドでしょう、
はるか遠くインドから、西洋へ
危険な旅路の末に運ばれた希少なダイヤモンドです。
ゴルコンダはダイヤモンドで多くの財をなし、その名は海外にまで轟いたと言われています。
こんなにも美しいダイヤモンドが産出される、まさに神秘の国であったのだと思います。
ベゼルに向かって3つに分かれたシャンクのデザインも17世紀では珍しい装飾です。
ハイキャラットゴールドに深いラピスブルーのエナメル、そして美しいダイヤモンドの組み合わせ、
シックな色合いでセンスが良く、ダイヤモンドをあしらった大変高価なリングは
どのような男性が、どのような女性へ愛を込めて贈ったのでしょうか、、、
彼らが貴族階級であったことは間違いありませんので、
もしかしたら、今でも肖像画が残っているような貴族かもしれませんね。
参考絵画 17世紀 貴族女性の肖像画
1636-1638 Henrietta Maria by Sir Anthonis van Dyck
17世紀、フランスでは太陽王ルイ14世が力を振るい
ヴェルサイユ宮殿も建設された時代です、
当時の西洋の芸術品、文学、貴族の肖像画などを見ながら、
色々な事を想像するのも本当に楽しいお品物だと思います。
今でも身に付ける事ができるコンディションの良さを保っていますが、
17世紀の古いリングですので、日常使いというよりは
お出かけの時にそっと身に付けたり、時折宝石箱から取り出して愛でるのが良いと思います。
他の17世紀のハートのベゼルの指輪や類似の指輪など、
参考にご紹介を致します。
Victoria and Albert Museum Joan Evans montrant コレクション
ハート型のベゼル、結婚のギメルリング 1600年〜1650年
Diana Scarisbrick, Diamonds, the collection of Benjamin Zucker, 2019 (ref 18)
今回ご紹介しているハートのベゼルのリングとシャンクの作りが類似しています。
通常、17世紀の指輪の場合、エナメルは殆ど残っておりませんので、
この指輪のフープ部分のエナメルは失われていますが
17世紀という古い年代を考えれば通常のコンディションです。
フープに比べて、ハートのベゼル部分のエナメルは殆ど残っており、
これは大変良いコンディションです。
17世紀の指輪の中では本当に例外的に珍しいデザインです、
コレクションに加えて当時に思いを馳せながら、
愛でるのもとても楽しめると思います。