メロヴィング朝 7世紀 ガーネット 宝石のクロワゾネ リング 指輪 アンティークジュエリー
メロヴィング朝時代、7世紀頃に制作された大変貴重なリングです、
丸いベゼルには金の枠の形に合わせてカットされた5つのガーネットが
クロワゾネの技術によりモザイクのように綺麗にきっちりはめ込まれ、
ベゼルの周りとショルダーには金の粒の装飾が施されています。
7世紀頃のジュエリーは本当に希少で数も残っておりません。
残っていてもゴールド製で宝石がはめ込まれた美しいものは滅多になく、
コンディションが悪く壊れているのが普通で、
今回ご紹介している美しいリングが良いコンディションで残っているのは奇跡的です。
ガーネットの色は赤黒くなく、美しい深い赤色をしています、
金のベゼルが透けて見えるほど透明感に優れた大変美しい古のガーネットです。
このようにガーネットを金の枠に嵌め込む独特な装飾、
クロワゾネの技術は3世紀の間に黒海の北より現れ、
5世紀に西ゴート族とフン族によってガリアへ伝わりました。
5世紀〜7世紀には、メロヴィング朝時代にフランク族にも好まれ使用されています。
参考資料と共に少しご説明を致します。
La messe de saint Gilles
National Gallery , London
1500年頃
この絵画に描かれているのはサン=ドニ大聖堂の内部です、
サン=ドニ大聖堂は多くの歴代のフランス王が埋葬されている歴史深い地になります。
この絵画の中に描かれている大きな十字架は7世紀のメロヴィング朝時代に作られたもので、
サン・ドニ大聖堂の宝物として有名な十字架でした。
サン=ドニの宝物
Guérard Nicolas作
1706年
ヴェルサイユ宮殿 収蔵
左側の大きな十字架が絵画にも描かれていた十字架です。
ですが、この美しい十字架は残念ながらフランス革命時に破壊されています。
現在は十字架の破片のみがパリのコイン・メダル博物館に保管されています。
参考資料 サン=ドニ 大聖堂の十字架 破片
コイン・メダル博物館 パリ
こちらが現在、パリのコイン・メダル博物館に保存されている、
フランス革命で破壊されたサン=ドニ大聖堂の十字架の破片です。
この美しい十字架はメロヴィング朝時代7世紀に制作され、
作者は彫金師であった聖エリギウスと言われています。
聖エリギウスはダゴベール1世に使える当時有名な彫金師で、
金細工師の守護聖人でもあります。
《聖エリギウス(店の金細工師)》
ペトルス・クリストゥス(1410/15-73)
1449年
メトロポリタン美術館、ニューヨーク
今回ご紹介をしているリングも、この十字架と同年代の7世紀制作されており、
ガーネットをはめ込む装飾が同じであることが分かります。
同じテクニックで作られた同年代のガーネットのジュエリーや装飾品なども参考資料として掲載いたします。
参考資料 5〜7世紀 ガーネットのリング
左のものはガーネットが失われてゴールドのみの状態になっています。
参考資料 7世紀 メロヴィング朝 ガーネット ゴールド リング
参考資料 アレグンド女王の装飾品 6世紀
サンジェルマンアンレー考古学博物館
参考資料 アレグンド女王の装飾品 6世紀
ガーネットのフィビュラ
参考資料 6世紀 エルペスのガーネットのリング
参考資料 メロヴィング朝 ガーネットの宝飾品
参考資料 フランク王 キルデリクの剣 装飾
アムステルダム国立美術館
ガーネットをモザイクのようはめ込んだ装飾品としては
主にフィビュラが残っていますので、リングが残っていることは非常に稀です。
当時、金の希少性は群を抜いており、
このような金を使ったジュエリーは極めて位の高い人物のみが身につけることができた
とても贅沢な宝飾品でした。
ガーネットの質も状態も大変良いです、
ガーネットにはヒビ等は無く、ルーペで確認しないと分からないような極めて微細な欠けが数カ所あるのみで
表面も磨耗しておらず美しい艶を保っています。
同じタイプの宝飾品の場合、年代の古さ故にガーネットが外れて失われていることが多いですが、
このリングはすべてのガーネットが揃っています。
リング全体のコンディションも素晴らしいです。
通常、美術館のガラス越しに見るような大変希少なリングです。
コンディションが良く、着用に耐えうる強度がありますので、
コレクションとしては勿論、
実際に手にとって身につけることができる喜びは格別のものと思います。
7世紀当時のそのままの美しさを保っている奇跡のリングです。
メロヴィング朝 マニュスクリプト
フランス国立図書館