古代エジプト第26王朝、
ブルーファイアンス製の大変品質の高いウシャブティです。
ウシャブティとは独特の死生観を持つエジプトの習慣の一つで、
死後の世界で召使いとして働くように埋葬されたファイアンス製の人形のこと。
一日に一つのウシャブティが必要と考えられていた為、
ファラオの墓には数百体の多くのウシャブティがファラオと共に埋葬されていたり、
埋葬者が来世へ生まれ変わった時に課せられる
様々な労働をも代わりに行う目的も担っていました。
ルーブル美術館 ウシャブティ
年代によって、様々なデザインのウシャブティが存在します、
今日ではウシャブティは古代エジプト美術の独特な芸術品とされ、
収集家の間で極めて高い評価を得ている小像です。
通常、ウシャブティはファイアンス(ガラス質の焼物)で出来ていますので、
美しいコンディションで現存するものは珍しいです。
ウシャブティには形がいろいろあり、背が低く太くてむっくりしたものもありますが、
こちらは細くてすらっとしたエレガントなタイプになります。
ウシャブティの顔の表現は様々で、
平たい顔に色付けしただけのものや、それほど目鼻立ちがしっかりしていないタイプなどあり、
それぞれに良さがあります。
今回ご紹介しているウシャブティは、目鼻立ちがはっきりした彫りの深いタイプです。
この場合、顔立ちの美しさは大変重要です。
通常は感情が読み取れそうな顔立ちのウシャブティはなかなかありませんが、
このウシャブティは顔立ちの表現が繊細で、口角がキュッと上がって
優しく微笑んでいるように見えることころが本当に美しいと思います。
参考 通常のウシャブティのクオリティ
ざっくりとした表現で、繊細さはあまり感じられません。
参考 プサムテク1世のウシャブティ
今回ご紹介しているウシャブティと同クオリティの作品です。
左 神官のウシャブティ 第30王朝
右 アメンエムハトのウシャブティ 第18王朝
ウシャブティの手は胸の前で交差し、
豊穣の杖を持っています。
顔立ちだけではなく、手指や道具の表現も
繊細で美しいです。
このウシャブティの表と裏に刻まれているヒエログリフの意味は分かっておりませんが、
通常、このヒエログリフには死者の書の一節や、
ウシャブティが世話をする主人の名前が刻まれているのが一般的です。
また、ウシャブティの背に柱状の装飾があるのもまた珍しいです。
360度どこから見ても 繊細な美しい作りをしており、
状態も極めてよく、大変品質の高いウシャブティだと思います。
ウシャブティの美の基準は作りに加えて、色もまた重要な要素です。
色あせた感じのウシャブティが多い中、
このウシャブティは鮮やかな水色をしており、
その美しい色も魅力です。
動画も是非ご覧になって下さい。
オーストリア 美術史美術館 ウシャブティ
ルーブル美術館 ウシャブティ
参考書 SHABTIS A PRIVATE VIEW
著者 Glenn Janes 氏
この参考書にはあらゆるウシャブティが掲載されていますが、
今回ご紹介しているウシャブティと同年代、
同クオリティの作品が掲載されています。
グレン・ジョーンズ氏 紹介
グレン・ジェーンズ氏は1954年にイギリスのウィルトシャーで生まれ
マールボログラマースクール、ノースイーストエセックステクニカルカレッジ、
スクールオブアートで教育を受けました。
プロの音楽家であり、古代エジプトへの関心は、
1972年の大英博物館のツタンカーメン展に遡ります。
マンチェスター大学でエジプト学を学び、それ以来ウシャブティを専門とし、
世界中の博物館を訪問し、主要な学者らと意見を交わしています。
グレン・ジェーンズ氏は、エジプト探査協会のメンバーでもあります。
The Gods and Their Markers
1878
Edwin Long