古代ローマ 2世紀〜3世紀 アンティオキアのティケとオロンテス コーネリアン インタリオ
美しい朱色のコーネリアン のインタリオ、
千数百年の時を経て、古代世界がふわりと浮かび上がる様が幻想的です。
古代ローマのインタリオで上質のものは見つけることが本当に困難になってきており、
小さく、単調なモチーフで彫りの良くないインタリオは見つかりやすいのですが、
モティーフが希少であったり、彫りが美しい等、
良いものにこだわってご紹介をしたいと思っています、
今回ご紹介するインタリオも希少性で群を抜いている作品です。
インタリオとしては、しっかりとした大きいサイズです、
その大きさを生かして複雑な構図が彫り込まれています。
このインタリオのモチーフは アンティオキアのティケとオロンテス です。
このモティーフは彫刻作品やコインなどでは見られますが、
インタリオとしては滅多に見られない大変希少な作品になります。
左の白黒写真はヴァチカン美術館に収蔵されているアンティオキアのティケの彫刻です、
ティケは城壁の形をした城壁冠と呼ばれる冠を被り、
都市の幸運、繁栄、財産や運命を司る女神でした。
ティケは主に古代都市アンティオキアの守護女神として人々に祀られ、
ティケ の足元には男性が踏みつけにされているような姿で表現されていますが、
これはアンティオキアを流れるオロンテス川が擬人化したもので
川を泳ぐ若者の姿をしています。
インタリオでも、その特徴がしっかり表現されており、
見応えのある作品だと思います。
古代人の想像力の豊かさが感じられる面白い姿は
コインにも残り、アンティオキアにおいて一般的であったことが伺われます。
参考例 女神ティケとオロンテスの古代のコイン
参考例 女神ティケとオロンテスのインタリオ
アンティオキアを流れるオロンテス川
数えきれない程のインタリオを手にして見てきましたが、
本当に希少な題材です、
多くの人々に親しまれたモチーフはインタリオでも残っておりますが、
特に珍しいモチーフの場合は、どのような意味があって制作されたのか?を
いろいろと想像できるのも楽しいひと時ですし、
千数百年の時を経て輝きを失わないインタリオ、
小さな彫刻芸術作品の魅力を改めて感じた作品です。