アールヌーヴォーのジュエリーでゴールドを使って
彫刻のような造形のリングに仕立てているものには時々出会うことがあります。
その多くは裸体の女性がリング全体を覆っているような美しいデザインのものです。
このリングも彫刻のような美しさを持つタイプの作品ですが、
今までに出会ったことのないとても珍しいデザインに心奪われました。
悲しげに膝を抱えた女性の足元には蛇が、そしてリングの周りには林檎が表現され、
この女性が原罪をおかしたイブであることがわかります。
今までに色々なアールヌーヴォーの彫刻タイプのリングをみてきましたが、
イブをモチーフにしたものは初めて目にしましたし、
本当に珍しくて芸術性の高いリングだと思います。
蛇にそそのかされ、神が食べることを禁じていた「善悪を知る知識の木の実」を食べてしまい
アダムと一緒に楽園を追放されることになった失意のイブが
うなだれるような姿で美しく表現されています。
彫刻タイプのリングの多くは女性が仰向けに表現されていることが多いですが、
このリングは膝を抱えて内側に籠っている姿であるのが珍しく
イブの後悔、苦悩を感じさせる雰囲気が作品のポイントになっており、
それをジュエリーで表現しているのが素晴らしいと思います。
The Expulsion of Adam and Eve from the Garden of Paradise
Alexandre Cabanel
両シャンクには林檎の実が表現されています。
コンディションもとてもよく、殆ど摩耗していません。
18kの鷲のホールマークが打ち込まれています。
メーカーズマークは R-L と打ち込まれています。
初めて見る極めて珍しいモデルであることと、これだけの芸術性の高いデザインですから
刻印がなく、資料がないだけで有名なジュエラーの作品の可能性がとても高く、
もしかしたら、後から資料が見つかる、、、ということもあるかなと思っています。
〜 参考 ルネラリック作 〜
今回のイブのリングと同年代に制作された同タイプのジュエリー
オフィーリアの指輪
この儚げな顔をした女性のリングは以前にソレイユで販売したものです。
モチーフはシェイクスピアの戯曲、ハムレットに登場する美少女オフィーリアと思われます。
このリングも彫刻タイプのリングの中ではとても珍しく素晴らしい出来栄えです、
昨年、ジュネーブで行われたクリスティーズのオークションで全く同タイプの作品が
22500スイスフラン(約250万円)で落札されていました。