超細密彫り マイクロカーブドアイヴォリー ブレスレット
パッと見ただけでは、この作品がいかに信じられないような仕事をしているかは
わからないかもしれません。
漁師が漁をしている絵画のような装飾、実はこれは細密画ではなく
「マイクロカーブドアイヴォリー」と呼ばれ、
アイヴォリーを限界まで細かく彫り上げた最小の彫刻作品なのです。
この脅威の細工のマイクロカーブドアイヴォリーは18世紀後期〜19世紀初期にかけて作られ、
王侯貴族達にとても愛されましたが、人間の持つ能力の極限に挑戦するような細工である為、
作ることのできる職人はごく僅かに限られており、絶対数が少なく、
当時はお城一つと交換されるほどの大変な希少価値がありました。
大きさを実感して頂きたいので、一円玉との比較の写真を掲載致しますね、
装飾部分の大きさは1.7cm×3cm、この小さなパーツの中に、アイヴォリーの繊細な彫刻作品が
収まっていることを考えると、驚くべき驚異の細工であることを感じて頂けると思います。
マイクロカーブドアイヴォリーの形は縦方向の長方形か丸型が一般的でですが、
この作品はブレスレットのパーツとして作られているので、横方向の長方形で、
まるで絵画のような構図になるのがとても美しいです。
右端の手前の大きな船から、左端の小さな船へと、合計5隻の船が彫られ、
船の両端を反り返る形に工夫しながら、
小さく薄いアイヴォリーの限られた空間の中で、遠近を表現しているのが実に見事です。
船には、折りたたまれたり、広げられたり、ゆったり垂れが去ったりした帆も表現され、
帆とマストを支える縄までもが彫り込まれていることに驚きます、
これほどの細工は、並外れた集中力では彫りあげることができなかったと思います。
マイクロカーブドアイヴォリーは、手にとって、その細工を見ていると、
過去を切り取って、そこだけ永遠に時が止まったような静けさを感じさせる詩的な作品で、
時の狭間にある記憶の断片をみているような気持ちになります。
人物の大きさは2ミリしかありませんが、こうして拡大をしてみると、
人物が帽子をかぶっていたり、ジャケットとパンツまでもが彫り分けられていることに驚きますし、
帆の表現も紐の彫りも素晴らしいですが、船の下部、波打ち際にそって小さな糸くずのようなものが
彫られていますが、これは打ち寄せる小波を表現したかったのだと思います。
肉眼ではここまで気がつくことは難しいのですが、10倍のルーペで覗いたり、
マクロで撮影した写真を引き伸ばして初めてわかる世界なのです。


4隻目の船のさらに左端に小さな帆が彫り込まれているので、それが5隻目です。
帆も薄く透けていたりして、本当に極限まで薄く彫られていることがわかります。
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ブレスレット部分は、紐のようにしか見えないのですが、
実はこれは髪の毛です。
髪の毛を細かくきっちり編み込んでいることで紐にしか見えないほどの
仕上がりです。
美しく長い髪の毛ですので、若い女性の髪だと思います。
マイクロカーブドアイヴォリー自体が大変希少な作品ですが、
こうしてヘアジュエリーとしてブレスレットに仕立てられているのは
本でも見たことがありません。




