シャム王国　シリル・ビラボン妃　ブラックオパール　ダイヤモンド　ネックレス

輝く孔雀の羽のような素晴らしい色合いのブラックオパールをあしらったネックレス。

石は濃紺〜黄緑に輝く石で統一されていますが、石によって輝き方が異なり、
石の表面や奥から沸き上がる無数の輝きはまるで生きているかのように、
光の当たる角度によって様々な美しい表情を見せてくれます。

リボンをモチーフにしたシルバーの装飾の土台には
オパールを囲むように輝くダイヤモンドが飾られています。
チェーンにもダイヤモンドが留められ、クラスプは極めて小さく作られており、
身につけた時に殆ど見えないようになっています。
3つのオーバル型の美しく希少なオパールは他のジュエリーにもセットできるよう、
ネジで取り外し出来るようになっています。

アンティークジュエリーの魅力の一つに、そのジュエリーが持つ歴史があげられますが、
このまばゆいブラックオパールのネックレスには、まるで映画のような恋の物語が秘められているのです。。。

1927年、シャム王国(今のタイ)のビラ王子は、
ミュージカル「王様と私」で知られるモンクット王の孫として生まれ、
13歳の時に、他のタイ王国の王族の子弟同様にイギリスへ留学をし、
イートン校からケンブリッジ大学へ進み美術を学んでいました。

同じくイギリスに留学をしていた従兄弟のチュラ王子は
「ホワイト・マウス」と呼ばれるレーシングチームを結成しており、
ビラ王子はホワイト・マウスのドライバーとなり、アジア人初のF1レーサーとして活躍することになります。

ビラ王子は第二次世界対戦前のヨーロッパにおいてF1で数々の好成績を収め、
アジア人で初めてル・マン耐久レースにも参戦、当時のトップドライバーの一人として活躍していました。

ビラ王子とシリル・ハンコック嬢の結婚式

1938年、24歳のビラ王子は、
美術学校で出会った21歳のイギリス人女性のシリル・ヘイコック嬢と結婚をします。

この美しいブラックオパールのジュエリーは、ビラ王子の従兄弟のチュラ王子の母が所有していたもので
チュラ王子からビラ王子へ贈られ、シリルはアンティークジュエリーのコレクターでもあり、
彼女の誕生石がオパールであった為に、ビラ王子はこのネックレスの他にも
美しいブラックオパールの宝石を結婚の記念や誕生日に彼女に贈りました。

1949年に二人は離婚をしてしまいますが、その後も友人としてあり続けつつ、
ビラ王子自身は再婚と離婚を4度繰り返しますが、本当の愛はシリルと共にあり、
1983年にシリルと再び結婚をします(^-^)

二人は1985年にビラ王子が心臓発作で天に召されるまで共にありました。
王子の死後もシリルはこのネックレスを生涯大切にし、2010年に彼女がなくなるとシリルの家族に引き継がれ、
競売に出品されました。

20代前半の若い恋人の映画のような愛の物語に思いを馳せることが出来るネックレス、
クラスプがとても小さいので、ビラ王子がシリルに、この美しいネックレスを身につけてあげたこともあったでしょうし、
ネックレスを身につけて訪れた場所や、どんな会話が交わされたかなども想像するのは楽しいことですね(^-^)

映画のようなロマンスが込められた素敵なジュエリーです。

濃紺〜黄緑へ変化する色味は同じなのですが、どの石も光の出方が違います。
ネックレスを手にとって動かしたり光の当たり方によって、まる生きているかのようにオパールの幻想的な光が石ので踊ります。

大変作りの良いネックレスです。
裏面のブラックオパールが留められている部分はネジ式で石を取り外すことができるようになっています。

チェーンの大きさと比較をして頂けるとわかると思うのですが、
極小のクラスプで、身に付けた時にはほとんど見えなくなります。

シックな箱に収められていますが、
おそらくこの箱は、もう少し後の年代の1940年〜1950年頃に
なんらかの理由でシリルがジュエラーに頼んで作らせたものと思われます。

美術の才能もあったビラ王子がデザインした、F1バンコクグランプリのポスター。
王子で美術の才能もあり、F1レーサーでもあるなんて、漫画の主人公のようですね(^-^)
ただ、このバンコクグランプリは第二次世界対戦の勃発により幻となってしまいます。

1992年に「王子様と私」というタイトルで、シリルは自叙伝を出版します。
かの有名なミュージカル「王様と私」や、ハリウッド映画「アンナと王様」の着想源になったのは
ビラ王子の祖父ですから、彼女が「王子様と私」という本を出版したのは面白いですね(^-^)

ここまでドラマティックな物語が宿ったアンティークジュエリーはそうはありません。