やっぱりインタリオは面白いですね、
この石は鮮やかな赤みがかったオレンジ色のコーネリアンなのですが、
なんと上半分が墨を混ぜたようにじんわりと黒いのです、このような石は初めて見ましたし、
石は石灰化すると透明感を失い白っぽくなってしまうので価値が下がりますが、
この石は石灰化した訳でもなく透明感を損なっていませんし、
ルーペでも確認しましたが最初からこの状態の石だったようで、
何故、古代人がこの石を選んだのか?想像力をググッと掻き立てられます。

モチーフは古代世界の大英雄アレクサンダー大王が獅子の毛皮を被り、
彼の祖先とも言われているヘラクレスに扮した姿です。
キリッとした古代彫刻のような滅多に見られないような深い彫りで素晴らしく、
表面は完璧に磨かれており、大型のふっくらしたインタリオは
文句なく美しい作品です。




アレクサンダー大王は、紀元前3世紀を生きた人物ですが、
それから二千数百年後を生きている私達の多くが何故彼の名を知っているのかは、
彼の率いるダイナミックなアレクサンドロス軍の戦いとドラマティックな人生、
彼にまつわる数多くのエピソードに惹かれているからに他なりません。

インタリオのモチーフとしてもぴったりなアレクサンダー大王をここまで完璧な彫りで表現しつつ、
何故、この面白い赤と黒の石を選んだのかは、
恐らく、大王の心の二面性と彼の運命を表現したかったのかな?と思います。

アレクサンダー大王は、ヘラクレスとアキレスを祖とする家系に生まれ、
ギリシア随一の英雄的血筋を誇る人物で、若く勇敢、軍を率いる天賦の才を持ち、
輝くように美しかったのだろうと思いますが、
同時に自分を神と想像してしまうような誇大妄想癖があり、かなり疑り深い人物でもあったようで
宴の席で意見が対立した古参の部下を酔った勢いで殺めてしまうなど、
ダークサイドがありました、、( 後に激しく後悔、、、)

彼の率いるアレクサンドロス軍は苦難を乗り越え広大な帝国を築き上げますが、
その途中でアレクサンドロスは運悪く蜂に刺され、若くして命を落としてしまい、
彼の築いた帝国は部下らによって分裂し、大王の近親の者らは根絶やしにされるなど
華々しかった彼の運命の行く先には、そんな暗さも存在します。

このインタリオを作った古代ローマ人は、赤と黒の面白いコーネリアンを使って
アレクサンダー大王の姿を完璧に美しい彫りで表現しつつ、
更に、大王の内面と、運命の暗い部分も表現したかったのかな?と想像すると
この黒色の部分が彼に訪れる暗雲を示しているようで、
このインタリオが歴史とリンクし何倍も面白くなるのです。

赤と黒の組み合わせはなんとなくアールデコっぽくてモダンですし、
リングにしたらとてもお洒落なインタリオリングになることでしょう、
ペンダントやクラバットピンも格好いいと思います。

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