バリのアンティーク ルビーリング ロータスとハミングバード
アンティークジュエリーというと、主にヨーロッパの煌びやかなジュエリーを思い浮かべる方も多いと思いますが、私達の住むアジア地方にも勿論面白いジュエリーがあったことを是非忘れないでくださいね。
アンティークジュエリーには各国の歴史や文化が詰まっているのが魅力的なので、思いがけず見慣れぬスタイルの珍しいアンティークジュエリーに出会うと、一 体どこの国の作品だろう?と心躍りますが、先日の蚤の市でとっても珍しい、バリの古いリングを見つけたのでご紹介致します。
買い付けた作品を手に取りながら、資料を見て、どの年代の作品と類似しているか?等を調べたり、実際にその指輪をどんな人物が身につけていたのかな?と想像するのも、とても面白いです。
バリのアンティークリングは寺院の宝物として聖なる儀式の際に高僧や、貴族が身につけていたものです、現存する数はヨーロッパのアンティークジュエリーに 比べると極めて数が少なく見かけることは殆どありません、今回ご紹介するリングは、とっても華やかなリングで、細長いカボッション型のビルマンルビーと、 細かな粒金細工が見られる美しい作品です。繊細な金細工が表現しているのは、くちばしの長いハミングバードと咲き始めたロータスの蕾で、なんとも夢のある デザインにうっとりするリングです。
ロータスの蕾を表しているのはこの部分です、この金の三角の細工がそのままロータスの咲きかけの花びらを表しているのです、丁度ビルマンルビーがトップに留められているのでロータスの蕾の先端のピンク色の部分のようで美しいですね。
ハミングバードを表現しているのはこの部分、ちょとわかりにくいかもしれませんが、ルビーへ向かってのびている細長い細工がクチバシです。
鳥のふっくらとした体がそのままシャンクへのびているようなデザインになっています。
リングは全体にボリュームがあり、ふっくらとした形ですが、薄い金で軽やかに仕上げられているので、不思議と重たさは感じず、やはりどこかエスニックな雰囲気を感じます。
フープは薄い金で仕上げられていますが、通常の使用への耐久性は十分にあります。裏面にも、細工が施され補強をされたか、もしくはサイズ変更の際に付けられたものだと思います。
そして、この指輪にはフクロウのホールマークが打ち込まれていますが、これはなんらかの経緯を経て、バリの指輪がヨーロッパに入ってきた際に打ち込まれたものです。
バリのアンティークジュエリーにはオランダのホールマークが打ち込まれている場合もありますが、それは、オランダの植民地であった為です。
そういったことが読み取れるのもとても面白いですね。
側面。
側面。
ベゼル裏。
側面。
側面。
現代のバリで行われている儀式の写真。
現代の儀式のほとんどは、バリの観光目的の為に行われているようです、この指輪が作られた18世紀の本物の儀式を見る事はタイムマシンがない限り、かないませんが、この指輪を填めて目を閉じて、当時の儀式に思いを馳せたいと思います。
資料として見つけた他のバリの類似の作品例です。
左上 16世紀の作品とされていますが、そこまで古いかどうかは?です。
左下 この指輪は、ハミングバードの形がよりはっきりわかるタイプですね。
右上 19世紀の高僧の為の指輪。
右下 19世紀の指輪、大変繊細な金細工です。