インタリオ 時を超えた小さな石に眠る広大な世界
インタリオにはその小ささからは想像も出来ない広大な世界が広がっています。。。
ぜひ想像して下さい、、、
遙か彼方の紀元前、インドやアラビアの山中で、つらく困難な作業を経て砂利石の中から宝石を見つけ出した人達の事を、、
ジャスパー、カルセドニー、ロッククリスタル、カーネリアン、ニコロ、瑪瑙、ラピスラズリ、シトリン、アメジストなどの宝石を、、、
インド・アラビアから、山、川、砂漠、海を越えて地中海へと至る長く危険な旅路をした宝石達を、シリアやトルコ、アレクサンドリアの作業場で受け取る宝石研磨職人を、、、
切りだされ磨き上げられた宝石達に、信心深く裕福な人々が、自分の名前であったり、かわいい動物や偉大な神の図柄、マジックシンボル、有名人の肖像、神話などの気に入った図柄の彫刻を施す事を彫刻職人に依頼することを、、、
《小さな石に沈め彫りの彫刻を施した作品をインタリオと呼びます》
ギリシャやローマの彫刻職人が古代の道具を用いながら、膨大な時間と労力をかけて彫刻を施し、宝石を《インタリオ》と呼ばれる極小の彫刻作品へ生まれ変わらせる事を、、、
インタリオの注文主達が彫刻が施されたインタリオを持ち、彫金職人の元を訪れ、インタリオをセットする指輪の形や金の重さ、装飾などについて相談した事を、、、
ギリシャやローマに生活している、位の高い人々、貴婦人達が、ジュエリーになったインタリオと共に旅をすることを、、、
このような人々が天に召された後、インタリオは墓の中や人知れぬ場所で、あるいは池や川の底で何世紀もの間、眠り続けてきた事を、、、
そして、長い間眠ってきたインタリオが近代人の手によって、驚きと喜びとともに発見され、この素晴らしい芸術品が世紀を越えてあなたの元へ届いたものである事を、、、
是非、強く想像してみて下さい。
ミノスまたはミケーネ文明のバンデッドアゲート。三面に彫刻が施されています(紀元前14~ 12世紀)
インタリオ彫刻の起源は、まさに文明の開始である紀元前4千年にまで遡ります。
文字の使用よりも以前にインタリオの彫刻は行われていたのです。
最初期のインタリオ彫刻は貝殻や石(ステアタイト、方解石、大理石、ヘマタイト、ラピスラズリ、めのう、カルセドニー、コーネリアン)で作られ、印章として使 われました。
インタリオには、幾何学模様やマジックシンボル、動物、文字(楔形文字や象形文字)、神や王、有名な人物の肖像、戦争や日常生活、神話をモチーフとした彫刻が施されました。
ステアタイトにグリフィンが彫られた古代ギリシャのインタリオ(紀元前7世紀?)
シュメール、バビロニア、エジプト、ミノス、ギリシャ、フェニキア、ペルシャ、エトルリア、ローマなど、あらゆる古代文明がインタリオのモチーフとなりました。
インタリオの形状には、時代や流行によってデザインの変化が見られます。
シュメール人は円筒印章を好み、ミノス人は円盤型、両凸レンズ型、そして丸みを帯びた長方形で両端がすぼまった形を好みました。
またバビロニア人やペルシャ人は円錐状の形を好みました。
エジプト人はスカラベを好み、フェニキア人やギリシャ人もスカラベを用いました。
スカラベが用いられるようになったのは宝石用で、スカラベの指輪自体は紀元前2世紀初頭に作られています。
スカラベの後、ギリシャ人はスカラボイドを用いるようになります(形状はスカラベですが細部に人工的な技術を使用)。
そして、スカラボイドはますます扁平・楕円状の形に変化していき、ヘレニズム期(紀元前4世紀)には通常のインタリオの形状が登場するのです。
めのうのスカラボイドにケンタウロスが彫られたギリシャのインタリオ。紀元前500年頃。
コーネリアンに兵士が彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前3世紀
イエローカルセドニーに兎が彫られたイタリアのインタリオ。後期ア・グロボロ様式、紀元前2世紀
ローマ時代のインタリオの魅力を理解するために6つのポイントをご説明します。
1 真贋について
当然ながら最も重要なポイントになります。アートマーケットでは、ギリシャ時代やローマ時代のインタリオとして非常に多くの模造品が出回っていま す。中には、近代(とりわけ18世紀・19世紀)に造られた模造品もあります。
専門家の場合は、石質やモチーフ、制作スタイルを調べ、彫刻に使われた道具 の特徴や表面の劣化やパティナを仔細に観察することで、それが何時頃のものであるのか判断することができます。
コーネリアンに「シレノスの勝利」が彫られたイタリアのインタリオ。18世紀後期。石質と製作スタイルから、このインタリオが18世紀に作られた事がわかります、おそらく、当時の観光客向けに本物のヘレニズム期のインタリオとして売られたのだと思います。
アメジストにアレクサンドロス大王が彫られたイタリアのインタリオ、18世紀。このインタリオはヘレニズム期の作風に似ています。
2 時代
より貴重なインタリオはヘレニズム期(紀元前4世紀~1世紀)およびローマ時代アウグストゥス期(紀元前1世紀後期)のものです。
紀元前1世紀から紀元1世紀にかけて、ローマのインタリオは最盛期を迎えました。
紀元150年頃から、製作スタイルに変化が現れ、彫刻の質もやや下がります、また、彫刻のモチーフも変化します。
特に3世紀の「マジック インタリオ」には興味深い作品がいくつかあり、初期キリスト教をテーマにした作品(3世紀~4世紀)は貴重です。
共和政ローマのバッカンテが彫られたバンデッドアゲートのインタリオ。紀元前2世紀~紀元前1世紀。
コーネリアンにヴィクトリーが彫られた後期ヘレニズム期のインタリオ。紀元前150年~100年
3 保存状態
価値あるインタリオは目立った破損や欠損がなく、石灰化していません。
保存状態に目立った破損や欠点などがある場合には価値が下がり、殆ど販売不可となります。
ですが、コレクターの需要の見込めるような極めて希少な作品の場合は別です。
アナトリアのTycheの寺院が彫られたローマのインタリオ。
紀元3世紀。このインタリオには目立つ傷が見られましたが大変貴重な作品であった為、有名なコレクターの方にお買い上げ頂きました。
コーネリアンにPothosの姿が« vivas »の文字と共に彫られたローマのインタリオ。コーネリアンなのに何故赤くないかというと、火(あるいは酸化)によって石質が変化し、石に石灰化が起こっている為です。 しかし、この石が興味深いのは、これが葬式用に製作されたものであり、火葬時に積み薪とともに焼かれたということがわかるからです。インタリオの価値としてはそれほど高くはありませんが、面白みのあるインタリオ作品として、お求めやすい価格でコレクターの方にお買い上げ頂きました。
4 石の美しさ
半透明の美しいコーネリアンは、当然ながらグレーカルセドニーやオレンジ色のコーネリアンよりも貴重です。価値の低いものから並べると、ガラス、方 解石、ジャスパー(赤、黄、茶)、グレーカルセドニー、オレンジ色のコーネリアン、ロッククリスタル、レッドコーネリアン、ガーネット、イエローカルセド ニー、ブルーカルセドニー、めのう、アイアゲート、ニコロ、ラピス(ローマ時代のものには希少)、グリーンアゲート(緑石英)、シトリン(ローマ時代ロー マ時代のものには非常に希少)、アメジスト です。
そして、石のサイズも重要です。小さすぎず、大きすぎずが大切になります。
なぜなら小さすぎても価値が上がりにくく、大きな石の場合は彫刻作業が容易になるからです。
ニコロ アゲートに幸運のシンボル(豊饒の角、鳥、方向舵、イルカ、蝶)が彫られた インタリオ。紀元1世紀初頭。
Venus Victrixが彫られたローマのインタリオ。紀元前1世紀~紀元1世紀
アメジストにプトレマイオスが彫られたヘレニズム後期のインタリオ。紀元前1世紀初頭
5 モチーフ
インタリオには文字(名前や« vivas »など)、マジックシンボル、多くは動物(牛、犬、馬、ライオン、ワシ)、神や人間の頭部などシンプルなモチーフ が用いられたものもあります。
女神フォルトゥナやアテナ、マーキュリー、マルス、ジュピター、« fede » (« junctio dextrarum »)などは、とても一般的です。
立ち姿全体を表したものは、頭部のみのものより良いとされており、3つの図柄が入ったものは1つのものよりも価値があると考えられています。また、生活の情景を描いたものは単なる立ち姿の図柄のものより好ましいとされています。
希少なモチーフは価格に反映します。
他のモチーフよりも稀少であるのは、、、皇帝、女神、神々(例えばバッカスがマルスよりも稀少で、ディアナはアテナよりも稀少、ヴェヌスは フォルトゥナよりも稀少)、コメディアンマスク、gryllos(グリロス)、サーカス マキシマス、田園風景の生活、ギリシャの英雄、トロイ戦争、サテュロスとニンフ、神話のモチーフ、エロティックモチーフなどです。
動物などはインタリオの中では多く見られるモチーフとなります。
ローマ軍船に乗ったワシが彫られたジャスパーのローマのインタリオ。紀元2世紀。素晴らしいモチーフです。
Silenus(シレノス)の仮面を被ったオウムを背負い、豊饒の角に配置されたgryllos(グリロス)のインタリオ。
非常に質の高いレッドコーネリアンが使用されています。紀元1世紀。大変素晴らしいモチーフです。
6 彫刻のクオリティ
個人的には、最も重要なポイントです。魅力的な構図、バランス、スッキリとして見やすい図柄、作りこまれたディテールなど…頭部のみのシンプルな肖像であっても、上質な彫刻が施されることで興味深い作品になります。
このような一般的なマーキュリーの図柄も、良い石に特徴的な彫刻技法で制作することで、
非常に魅力的なインタリオになるのです。
大きなイエローカルセドニーにセレスのアートリビュートと共に彫られたニケのインタリオ、ヘレニズム後期。(15 x 18.5 mms)
良い彫刻が施されたインタリオには、上質な石が使われている事が多いです。質の悪い石に良い彫刻が刻まれた作品を見た場合、あるいは、上質な石に質の悪い彫刻が刻まれた作品を見た場合には、古代作品の模造品の可能性が高まりますので、特に注意してください 。
まとめ
インタリオの魅力を出来るだけ詳しくご説明いたしました、上質な石で、魅力的なモチーフと高い彫刻技術で作られた本物のインタリオを完全な保存状態で見つけることがいかに難しいことであるかを分かって頂けたらと思います。
インタリオは数千年前から存在する素晴らしい宝物と言えます。
希望の女神のインタリオ、珍しく素晴らしい題材は、最高品質の美しいプラスマに彫り込まれています。
古代ローマ 紀元前50年〜紀元50年
こうしてみると、インタリオってロマンありすぎると思いませんか?
インタリオは女性の爪程の大きさのものが多いのですが、その小さな石の向こう側に計り知れない程の
ロマンがあるのです。
販売済み作品には美しい石を使った優れた彫りの希少なインタリオを多数掲載しております。
ぜひ、こちらもご覧ください。
販売済インタリオのページ