古代美術 古代ローマ1世紀 3層カメオ 皇后(?)
3層の石を巧みに使った古代ローマ時代の大変希少な美術館級のカメオです。古代の歌が聞こえてきそうな深みのある佇まいに強く心惹かれます。
何故このカメオが古代ローマのカメオの中でも素晴らしいかというと、それには5つの理由があります。
1、3層アゲートが使われている。
古代ローマのカメオは2層が殆どです、2層の場合は、地の色とその上の彫刻部分の色が2色に別れています。3層アゲートの場合は、地の色、その上の彫刻部 分、そして、さらにその上にも3つ目の色の層があるのです。このカメオでは、3つ目の色の層は、髪の色と衣服として表現されている部分になります。
3層の石を使ったカメオは2層のカメオに比べると、彫るのが難しいのですが、立体的でより深みのある印象強い仕上がりになるのです。
2、モチーフの素晴らしさ。
古代ローマ時代のカメオのモチーフは、アテナ、メデューサ、エロス等が、お守りや愛のシンボルとして広く愛されたので、それらのモチーフのカメオがよく作 られました。このカメオのモチーフは古代ローマのカメオの中でもとても珍しい女性ですが、古代ローマ時代にカメオは特別な物でしたから、誰でもない女性を カメオとして彫ることはありませんでした、高価なカメオとして彫られる程の特別な女性、ローマ皇后等の地位が高い女性がモチーフとして選ばれているので す。
残り3つの理由については、次ページからご説明しています。
3、彫りの質。
古代ローマのカメオは、彫りが荒いざっくりとした場合が多いです。
ですが、このカメオの彫刻は素晴らしいです、3層アゲートが使われているのはもちろんですが、髪の流れをよく見ると、とても複雑な髪型をしっかり表現してあることがわかります、そして体には古代の衣装を身にまとっているのです。
大きな目に丸い鼻、この特徴のある顔立ちが、古代ローマ時代のカメオだとわかる資料を掲載しましたので、是非ご覧下さい。
石の厚みも十分にあります。
ナポリ美術館所蔵、古代ローマ1世紀のカメオ。
一番右端の女性の顔を拡大してみると、、、
顔立ちの表現の仕方が同じスタイルであることがわかります。
古代ローマのカメオ 1世紀の作品。
ポンペイより発掘、これはこの作品が79年より前に作られた事を示しています。
ナポリ美術館所蔵。
4、コンディションの良さ。
古代ローマのカメオの殆どは大きく欠けたり割れたりして壊れています。
年代を考えれば普通のことなのですが、このカメオはごく小さな欠けを除いて大変よいコンディションを保っています。
立体感と厚みのある3層のカメオとして奇跡といえるコンディションなのです。
5、年代の古さ。
古代ローマのカメオで現存しているものの殆どは2世紀〜3世紀のものです。
ですが、このカメオはそれよりも古い1世紀のヘレニスティックスタイルの作品です。
古代ローマ時代のカメオを模倣した作品は16世紀〜18世紀の間に多く作られています。
現在、古代ローマ時代のカメオと呼ばれているものの多くが、その年代に作られた作品で、本物の古代ローマのカメオはとても希少です。
裏面。
このカメオの何が素晴らしいか、じっくり説明致しました。
5つのポイント全てが揃う古代ローマのカメオにはそうそう出会えませんから、
こうして手に取れること自体が幸せです。
約2千年前に生まれた、この小さな彫刻作品を手に持ち、古代ローマ時代に思いを馳せるのは魂が揺さぶられるような素晴らしい経験なのです。
このカメオを見ていると、ポンペイやローマへ旅した時に見た、古代ローマ時代の大理石の巨大な建築物や素晴らしい彫刻を思い出して、改めて心打たれますし、
ローマの美術館で古代ローマのカメオも見ましたが、ガラス越しではなく、希少な古代ローマのカメオを手に取れる喜びは格別です。