ヒストリシズム スタイル ゴールド ガーネット ブローチ
輝く金を華麗に加工したジュエリーを見ると、いつも思いますが、
固い金属をいかにも柔らかい布のように、変幻自在に整える事の出来た当時の職人達の技術の高さは、王侯貴族らの美意識の高い注文主がいたからこその賜物だ と唸らずにはいられません。やはり、仕上がりにこだわって、厳しい目で最終確認をする注文主がいないと、作品の仕上がりへの小さな妥協が二つ三つと重なっ て、結果的に大きな品質の低下を招くからです。
徹底的に仕上がりにこだわる注文主がいれば、それに答える為に職人達の技術も磨かれ、技術に対する職人自身の誇りも生まれますから、美意識の高い注文主と 高い技術を持つ職人、この2人の間に変な作品が生まれる隙はありません。両者とも醜い作品を許すことが出来ないからです。
良い作品を仕上げることが出来れば、報酬も十分に支払われ、
物を作る人にとっては、大変やりがいのある良い環境だったと思います。
アンティークジュエリーは見た目の煌びやかな美しさも勿論素晴らしいですが、何故その作品が素晴らしく美しいのか?作品の裏側にあるものにも注目して触れると、より楽しむことが出来ます。
そんなことを考えながら、この作品をじっくり観察すると、どこを見ても、細かく綺麗に丁寧に仕上げられているので、細部に渡って見られることを意識して作られていることが良くわかりますし、職人としてのプライドもしっかりと感じます。
この作品を魅力的にしている美しい部分は、上下にセットされた顔の装飾です。金細工では模様が施された作品は多くありますが、小さな顔の装飾が施されているものは珍しいので個性を強く感じます。
この金細工は、金を彫り出したものではなく、ルポゼの技法で作られています。
この小さな顔の装飾は、ルネサンススタイルで仕上げられています、髪を真ん中で分けて、髪飾りをつけて、目を閉じた女性の顔が大変神秘的で、小さな装飾でも強い存在感を放っているのが魅力です。
例えば、この部分の装飾が顔ではなく、何かの模様だとしたら、ここまでこの作品に個性を感じることはなかったでしょう、ほんの小さな装飾が印象を決定的に変えているのが、このブローチのデザインの面白さです。
顔の装飾から左右対象に、繊細で立体的な縁飾りが施されていますが、同じ装飾パターンが使われず、大変丁寧に仕上げられています、本物の羽のようにふんわりとした装飾もとっても綺麗ですね。
このような装飾は、過去の美術様式からヒントを得るヒストリシズムスタイルの始まりで、そんなところからも、美術様式の大きなムーブメントの流れの予感を感じてとても面白いです。
中央にセットされたガーネットは深いワイン色、左右の天然真珠も黒いエナメルで囲まれて、とても渋くまとめられています。
地の金の表面をびっしりと囲む模様も、光を反射した時に、さりげなく感じる控えめな美しさを感じます。
裏面を見ると、ブローチピンの部分に金具がついています。
この作品は、本来はブレスレットか、ネックレスの美しいメインパーツであったものをブローチとして使えるように加工したものだと思いますが、その加工によっては価値は下がっていません。
アンティークジュエリーは、時を経てペンダントがブローチへ、ブローチがペンダントへ等と姿を変えていることが多々あります、よく、それに対して価値に影 響が出ますか?と質問をされますが、それはケースバイケースで、一概には言えないのですが、価値が下がる場合には、きちんとご説明をさせて頂いておりま す。
ブローチとしてのピンは外せるようになっているので、ブレスレット用の金具を作り、黒や茶色のリボンで手首に巻いてもとっても素敵なブレスレットになるでしょう。
ブレスレット用の金具を作り、ここにセットすることができます。
ブレスレット用の金具を作り、ここにセットすることができます。
このフックにはタッセルなどの紐を下げたり、他のパーツを下げられるようになっています。
18kのホールマーク入り。