古代美術 古代ローマ2世紀 カメオ 古代ローマ皇帝ルキウス・セプティミウス・セウェルスの妻 Julia Domna ユリア・ドムナ J・KUGEL
パリ随一のアンティークギャラリー、J・KUGELが所有していた女性がモチーフの古代ローマ時代の大変エレガントなカメオです。
彼女は古代ローマ皇帝ルキウス・セプティミウス・セウェルスの妻 Julia Domna ユリア・ドムナ でしょう。
ユリア・ドムナの古代彫刻、古代コインの特徴はサイドの波打つ毛と、耳下まで足れた髪が丸みを帯びていること、そして、ドレープの衣服を身につけているこ と、です。このカメオの特徴と一致しますし、彼女が生きた年代が2世紀後半〜3世紀前半ですから、このカメオの年代とも一致しています。
古代ローマ時代に、カメオとして残される程の人物ですから、皇后という地位も十分です。
こうして、遥か彼方から生き残ってきた古代のカメオが、一体誰がモチーフなのかの手がかりががわかるのは、カメオが時を超えて新たに生き返るようで、本当に嬉しいことです。
古代ローマのカメオは沈め彫りのインタリオに比べて浮き彫りの為に壊れやすく現存しているものはとても希少です、カメオのモチーフの多くは魔除けのメ デューサ、ミネルバ(おそらく軍隊用)、婚姻のカメオ、キューピッド等が多いので、このような人物のモチーフは珍しく、更にこのカメオは真正面を向いてい ますが、古代ローマ時代のカメオのほとんどは横向きなので、このカメオのように真正面を向いているものは大変珍しいものなのです。
商品として制作されたカメオではなく純粋な芸術彫刻作品なので、顔立ちや佇まいから溢れるような暖かみと芸術性の高さを感じます。
カメオのサイズ自体は小さいのですが、実物はサイズを超えて大きく見えるオーラがあります。
古代ローマ時代のカメオは下膨れのふっくらとした頬をしていますが、このカメオもふんわりと丸みをおびた優しい顔立ちをしています、顔のパーツが中央に 寄っているので、余計に顔がふっくら見えるのでしょう。何故古代ローマのカメオはふっくらとした顔立ちのものが多いのか?古代ローマのカメオと出会う度 に、とても興味深く思っています。
輪郭はふっくらと柔らかく繊細ですが、目鼻立ちは非常にざっくりした彫りです、見開かれた目はどこも見ていないのですが強い存在感があります。
カメオの上部から撮影した写真ですが、顔立ちにくらべると、髪型の表現がとても繊細に仕上がっていて、アンバランスであるところも本当に魅力的です。
古代ローマ時代の女性の髪型は複雑な編み込みのものがあり、どのようにしたら再現できるのか?考え込んでしまうものも多いのですが、
このカメオの髪型もトップの部分とサイドの部分の毛の流れの表現が繊細です、サイドは波打つような巻き毛っぽい表現、トップは平たい表現です、現代では頭 をひねってしまうような古代ローマ時代の女性の髪型ですが、それが逆に当時を生きていた女性のリアルな装いを感じさせて大変面白いです。
衣服の布の流れの表現も繊細です。トップはふんわりした感じ、胸から下に何か切り替えのようなものがあるようです。
彫り自体は、細くさりげない線なのですが、無造作ではなく、実在している衣服の構造をしっかり表現させたような雰囲気を感じます。
適当にサクッと彫ったものとは明らかに違うところがリアルで面白いです(笑)
金のフレームとのバランスも大変よく、このカメオを女性の胸元に飾ると、たちまちデコルテがアーティスティックな雰囲気に溢れることに驚きます。
古代ローマ時代のカメオをさりげなくペンダントとして身につけるのは素晴らしく上質なお洒落ですね。
さりげないですが目を惹く作品で、時を超えた小さな芸術品が、当時の雰囲気をそのまま宿して佇んでいるような素晴らしい存在感があります。
石の質感も素晴らしく、ややアイボリー色の上層と、青みがかった黒から灰色へグラデーションが感じられる下層に別れており、
実にエレガントです。
古代のカメオに興味のある方は心から満足出来る作品です。
かなりの厚みがあり、迫力のあるカメオです。
裏面には、J・KUGELコレクションのシールが貼られています。
J・KUGELは、パリのアンティークディーラーならば、知らぬ者なしの歴史あるギャラリーです。