「詩人ダンテの魂 永遠のベアトリクス」 17世紀 カメオ
顔の横で編み込んだ髪型が印象的な女性のカメオ、この髪型は他のカメオにはまず見られない特別な髪型で、女神や他の女性像と区別するためにこの髪型が重要なポイントになっている事を感じます。
17世紀にこのカメオが作られている事を考えると、それ以前の時代に存在した女性が、モチーフになっていることは確実です。
このサイズのカメオは通常男性用の指輪にセットされました、当時、男性は自分が惹かれる歴史上の美しい女性をモチーフにしたカメオを注文して身に着ける事が多かったのです。
では、一体この女性は誰なのでしょう?わざわざカメオを注文してまで身に着けたいと思うほどの女性ですから、強い魅力があり十分に知られていた人物の筈です、そしてこの髪型は中世の女性によくみられるヘアスタイルです。
過去の芸術作品を調べてみたところ、中世イタリアの大詩人ダンテの霊感の源であった有名なベアトリクスではないかと思いました。。。
ベアトリクスはダンテの「新生」「神曲」になくてはならない重要な女性ですが、ダンテとベアトリクスは殆ど言葉を交わした事もなく、恋人同士ではありませんでしたが、ダンテの魂は熱病のようにベアトリクスに惹かれていました。
ベアトリクスは若くして天に召され、ダンテは嘆き悲しみベアトリーチェを神格化し、彼女を永遠に賛美する事を心に誓い、作品を作りました。
彼女は大詩人ダンテの作品になくてはならない程の女性ですが、分かっている事は多くはなく、それが逆に神秘的なイメージを強く作り出しています。彼女は神秘的な存在としてダンテの詩の中に生き続け、それは過去も現在も未来も変わらない筈です。
中世の写本にダンテとベアトリクスが橋の上ですれ違う有名な場面を描いたものがありました。ベアトリクスはダンテに軽く会釈をしただけだったようですが、この時以来、ダンテの魂は永遠にベアトリクスを求めるようになったのです。
ベアトリクスは神秘的な女性として、ダンテだけではなく芸術家達にインスピレーションを与え続ける永遠の存在となっています。
中世の女性の髪型。
石の色は味わい深いアイボリー色に、微妙な色がところどころ混ざっています。
周囲をホワイトエナメルで縁取りしてあるのも、カメオリングとしてとても珍しい作品です。石の色ととても良くあった装飾です。
斜め横。
裏面。サイズ変更は可能です。
真横。
真横。
後ろから光りを当てると、石が光で透けて美しい表情を見せてくれます。カメオは小さな彫刻芸術作品です。指に嵌めればいつでも美しい彫りを楽しむ事ができます。