Comte Enguerrand du Suau de la Croix作 カボッションプリカジュールエナメル ペンダント
この独創的で類稀に美しいエナメルペンダントはフランスのジュエラー、Comte Enguerrand du Suau de la Croix(スー・ドゥ・ラ・クロワ伯) の作品です。
中央に金の斑が美しい美しい大きなラピスを配置し、周囲をカボッションプリカジュールエナメルの花の装飾が囲んでいます。随所に見られる彫金からは中世の美術様式のテイストを感じます。
スー・ドゥ・ラ・クロワ伯は光を通す美しい七宝のプリカジュールエナメルを、まるでカボッションカットの宝石のように美しいスタイルに革新的に飛躍させた19世紀後期のジュエラーとして知られています、この技法は非常に複雑でスー・ドゥ・ラ・クロワ伯と弟子のJeanne de Montignyのみが作り上げる事ができた幻の技法です。
飛び抜けて優れた作品を残していながら資料があまり残っていない為に憶測ですが、おそらく、スー・ドゥ・ラ・クロワ伯は、財産も十分にあり働く必要はなく、ジュエリー制作も自身の情熱や趣味で作っていたのではないかなと思っています。ここまでの飛び抜けた作品を作っているので、もっと資料が残っていても良い筈なのにそれがないと言う事は、プロのジュエラーというよりはアマチュアに近い感じだったのかもしれません。
デザインのテイストは中世の美術様式のキリストや各聖人などが用いられ、モチーフは花やトンボ、鳥などが見られます。独創的でセンスが良く、スー・ドゥ・ラ・クロワ伯の洗練された趣向が伝わってきます。
スー・ドゥ・ラ・クロワ伯の作品を所有するならば、やはりカボッションプリカジュールエナメルが優れた出来映えの物とデザイン性の高い作品を求めたいところですが、この作品はその両方を備えた美しく本当に貴重な作品です。
とても大型の作品です、このペンダントに似合うシルバーのしっかりしたチェーンを準備したので素敵に身に着けて頂けるでしょう。
斜め横。
この作品をこうして横から見ると、通常ではあり得ない程ふっくらと盛り上がったエナメルがで有ることがお分かり頂けると思います、これがスー・ドゥ・ラ・クロワ伯独自のテクニックのカボッションプリカジュールエナメルです。
拡大すると良く分かりますが、まるでカボッションカットの宝石のように見えるほどの膨らみです。プリカジュールエナメルをここまで盛り上がらせるのは至難の業で、スー・ドゥ・ラ・クロワ伯の作品以外では見ることは出来ないでしょう。
エナメルも色とりどりの美しい色合いです。
そして、この小さな水色のエナメルは表裏が繋がっていて、ほぼ真円に仕上がっているのです。真円のエナメルなんて本当に初めて見ましたから驚きました!裏面の写真を次ページに掲載しています(^-^)
水色のエナメルの裏面。ほぼ真円です。エナメルでこんな事が出来るなんて思いもしませんでした!
裏から光りを通すとステンドグラスのような美しさです。
そして、このカボッションプリカジュールエナメルは光を通すと色の濃淡がはっきり出るのです。エナメルをカボッション状にするだけでも至難の業であるのに、さらに色のグラデーションまで花にあわせて表現しているのですから、本当に素晴らしい技術です!
花の装飾の表現がオープンワークで同時にプリカジュールエナメルですから、大型の作品であるのに非常に軽やかで重さを感じないのも素晴らしいです。
プリカジュールエナメルの裏面は凹んだ作りです、カボッションプリカジュールエナメルをより美しく見せようという工夫が感じられます。
プリカジュールエナメルの裏面は凹んだ作りです、カボッションプリカジュールエナメルをより美しく見せようという工夫が感じられます。
シルバーギルトの土台には所々にセンスの良い模様が滑らかに美しく彫金され、中世の美術様式の影響を感じます。
裏面。
フチドリの彫金。
独特の彫金のデザインにセンスの良さを感じます。
大型の金の斑が美しいラピスは夜空の星のようなイメージなのかなと思います。
とても綺麗なラピスです。
18kの鷲などのホールマークが打ち込まれているのですが、驚いたのが、、、
このマーク。これはスー・ドゥ・ラ・クロワ伯の家の紋章なのです、紋章も運良く見つける事が出来ました。スー・ドゥ・ラ・クロワ伯が自分の技術とセンス、作品に強い誇りを持っていた事が伺えます(笑)
裏面。
作品の下部の側面にDU SUAU DE LA CROIXのサインが確認できます。
裏面。
この作品が作られたのはスタイルと資料から、1905年頃だと思われます、このイニシャルと日付はおそらく、後の1924年に刻まれたものでしょう。
1874年〜1899年、これはおそらくイニシャルの人物が生きた年月、そして1924年はこのイニシャルの人物の死後25年が経っています、どのようなストーリーがあったかわかりませんが、想像力をかき立てられます。
このペンダントに似合うシルバーのしっかりしたアンティークのチェーンを見つけました、ペンダントとのボリュームがバランス良く着けて頂けると思います。
スー・ドゥ・ラ・クロワ伯の作品でBIJOUX ART NOUVEAU VIVIENNE BECKERの本に掲載されていたものです。でも、本の説明では右下のものが、スー・ドゥ・ラ・クロワ伯の作品と説明されていましたが、一番上の作品に明かにカボッションプリカジュールエナメルが見られるので、これは本の記載ミスだと思います。
又は、The Paris Salons 1895〜1914 ,Arastair duncan という本にスー・ドゥ・ラ・クロワ伯が、1903年〜1908年の間に発表したジュエリーが6頁にわたって白黒で紹介されていますが、6頁にわたり紹介されることは稀な事です。