ビザンチン シルバー マリッジリング 〜アルファオメガ〜
大変珍しい4〜5世紀のビザンチンのシルバーリング。今からおよそ1500年以上も前の素晴らしい美術館級の作品です。こうして私達の目の前に姿を現してくれる事に感謝せずにはいられません。
ベゼルに男女の顔が向かい合わせに彫り込まれていますが、これは当時の結婚の時に作られたマリッジリングのスタイルです。
このスタイルのマリッジリングは古代ローマ時代、4世紀〜5世紀初期に流行し、そのままビザンチンに受け継がれました。
この典型的な肖像のスタイルは共通しており、特にそれほど写実的ではありません。しかしながら、しばしば、流行の髪型や、ジュエリーがこのカップルの肖像には表現される事がありました。
左右のギリシャ文字のアルファオメガは始まりと終わりを示し、神を表す言葉でもあります。それと同時にこの結婚が神の元で行われ、二人の愛は始まりから終わりまで、死が訪れるまで続く事を示しているのです。
こうしてベゼルに彫られた肖像を見ると、ほぼ点と線のみで描かれたとてもシンプルな表現で、当時の男女の特徴を広く捉えたようなデザインです。上下のみに点線が彫り込まれているように見えますが、本来これは四角く点線が縁取りのように打ち込まれたデザインでした、それが摩耗により左右の点線が消えた為、上下のみに点線が残っています。
カップルが顔を向き合わせて表現された当時の結婚指輪、ごくシンプルな表現が余計に想像を膨らませ、当時の結婚がどんなものだったのか、夫婦の愛のあり方や、長い時を経た指輪のロマンを深く感じます。
何故、この指輪がビザンチンの作品だと言えるのか?このシルバーの指輪を一つ見ただけでは実感がわかないかもしれないですね。ビザンチンのジュエリーの専門書にいくつか同じ特徴を備えた作品が掲載されていましたから、参考に写真を掲載します。これはシルバーではなくゴールドのタイプ、同じく男女の顔が向かい合わせで表現されていることがわかります。
この二つは、より装飾性の強いタイプです。
左 ゴールドマリッジリング 5世紀 Ferrell collectionより。
右 ゴールドマリッジリング 4世紀後期〜5世紀初期 dumbarton oaksより。
こちらは名前が彫り込まれて人物が特定できる珍しいタイプです。AristophanesとVigilantiaと彫り込まれています。
1400年の長い時により周囲は摩耗していますが、本来は8角形の特徴的な形をしていた指輪です。
斜め横。
8面にはそれぞれ文字が刻まれていましたが、現在は摩耗により消えておりアルファオメガと星以外は何が刻まれていたかはわかりません。
真横。
真横。この星のマークは幸運を意味します。
ベゼル裏。