中世 結婚指輪 フェデリング
この印象深い金の指輪は1500年頃の貴重な結婚指輪。
つないだ両手で信頼を表すフェデリングと呼ばれるデザインです。
約2ミリに満たない細いフープに模様が彫金され、この指輪はとてもピュアな指輪でもあります、
資料入りで説明していますので是非ご覧下さい。
黒いガラスの上に置いて写真を撮影しているので黒っぽく写ってしまっている部分がありますが、
実物は全面に金の輝きが出たリングです。
両手を組み合わせたフェデリングのデザインです。
こうして拡大すると手彫りの指輪である事が分かります。
15世紀頃の結婚は家長同士が決めた結婚が主で恋愛結婚は殆どなかった時代、結婚は個人の感情よりも家同士の財産の結びつきや同盟関係を保証する手段だったのです。
婚約の段階で新郎は若い新婦へ指輪を贈ります。
婚約を経て神の前で結婚を誓いあいます。
結婚において新婦が処女であることは重要で、処女ではない場合は体の一部にピンで傷をつけて血を寝具につけたと言われています。というのも、翌朝に寝具を窓の外へ出して結婚が成立したと言う事を皆に見せる儀式があったからです。
こうして、無事に(?)結婚が一度成立すると離婚することはほぼ不可能でした。離婚成立の可能性があるとすれば、親近結婚であった場合、また当時は、病、出産などで死亡する確立が高かった為に、相手が死亡した場合により離婚が認められました。
王ですら離婚は難しく、フィリップ尊厳王は20年離婚に苦しみ、最終的には離婚を諦めています。
この指輪は、そんな中世においての家同士のつながりの結婚だけではなく、心と心のつながりを表した珍しい指輪なのです。
その証に内側に文字が刻まれています。
ELLE...
ME....
PLES....
この ELLE ME PLES は綴りが間違っており、本来の綴りは ELLE ME PLAIT となります、意味は 彼女が好き です。
何故、綴りが間違ってるのかというと、当時は識字率が低く、字を書ける人も読める人も少なく、耳で聞いた音をそのまま刻んでいるからです。
指輪の内側に ELLE ME PLAT を彫り込んであるのは、この結婚は家同士の決まりだけではなく、彼女を愛している、心からの結婚だということを記したかったのでしょう。
当時の結婚においては珍しい恋愛感情をともなった結婚だったという事が伺い知れてとてもロマンティックな指輪です。
そして、おそらく結婚をした二人、特に花嫁は10代前半くらいの年齢だったと考えられますから、そういう事を考えるとこの指輪がとてもピュアな指輪に思えて仕方ありません。
全体像。ベゼルのフェデの部分のデザインとシンプルな模様がリングを一周くるりと囲んでいます。
反対側。
約2mmに満たない細さですが、模様が一周くるりと施されているのが繊細です。
全体的に非常にコンディションの良い指輪ですが、写真中央のややつるっとしている部分のみ補修されています。
500年前の繊細な指輪ですから補修されているのは当たり前と考えた方が良いでしょう。
ベゼル裏面。
サイズ変更は出来ません。
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