Pichler ストーンカメオ リング
18世紀の天才宝石彫刻師によって生み出されたこのカメオは謎に溢れています。
カメオを買い付けた後はそのモチーフが一体何であるのか?を考えるのですが、大抵のカメオは古代神話世界をモチーフにした作品が多く、過去の彫刻師達も古代の彫刻作品から学んで作品を作っている事が多いので、カメオの顔立ちや彫り込まれたアートリビュートから、何のモチーフなのかをほぼ推測する事ができます。
ですが、このカメオに関してはおそらく〜だと思う、という域を超える事ができません。そして、このカメオをさらに謎に、魅力的にしているのがこの少しおどけたような愉快なモチーフです。
モチーフの特定が出来ないこのカメオ、でもこのカメオはそれが幸いしてアンティークの楽しさ、面白さを教えてくれる存在でもあるのです !
古代世界へ旅に出るようなお気持ちで是非ご覧下さい ☆
このカメオには数人のモチーフが一度に彫られているので少しづつご紹介しますね。左側に彫られているのは美しい女性のようです、おそらく、、
アフロディーテやアテナでしょうか?
そして、右側にはこの男性の顔が彫り込まれています。ヒゲが生えて威厳がありますね、、、おそらく、、、
ゼウスやアレス?
そして少し小さめに表現されている一番下に彫られている顔は、、
エロス?
一番最初に少し紹介したこのモチーフだけが何だか分かっています、それは、、
コメディアンマスク!
この愉快な表情の顔は何かというと、古代ギリシャ喜劇において使われていた喜劇の仮面なのです。このコメディアンマスクは古代世界をモチーフにした芸術作品に使われる事がある装飾です。
三人の人物と喜劇の仮面が彫られたこのカメオ、全体像を見てみましょう☆
少し縦長のシェイプの美しい暖色系のアゲートに、男性二人に女性一人、そしてこの喜劇のマスクが彫られています。それにしても4つのモチーフをバランス良くおさめた素晴らしい彫りです、雰囲気も芸術的で特別なカメオであることがひしひしと伝わってきます。
このカメオには一体どんな意味があるのでしょう?三人の人物と喜劇の仮面が彫られているので、何か喜劇に関係するモチーフなのかもしれません。ギリシャ喜劇にもいろいろな演目があったようですが、この人物達がギリシャ喜劇の演目の中の人物達なのか、それとも神々をモチーフにしたものなのか?謎が謎を呼びます。
あらゆる可能性や組み合わせがあるので100%特定する事は不可能ですから、ここはもう想像するしかないのです。
私はこのカメオを見た時に感じた、アフロディーテとアレス、そして二人の子共である愛を司るエロスであるという組み合わせ、そしてユーモアのある神々の愛の話から感じられる、愛は喜劇、というところに落ち着きたいと思います(笑)
皆さんも、古代ギリシャ世界や神話の世界を想像していろいろ調べながら自由に解釈して下さい。
アンティークの楽しみ方の一つに、分からない事を調べたり、過去の世界に思いを馳せて夢を見る事があります。
このカメオはそういう楽しみ方が無限にできますから、是非味わって楽しんで欲しいと思います。
そして、この素晴らしいカメオの作者のサインがここに彫られています。
記された名はピクラー、今から約200年以上も前に活躍したイタリアの天才宝石彫刻師です。このカメオはジョバンニ・ピクラー、もしくはルイージ・ピクラーの作品だとされています。
ピクラーは古代神話のモチーフについて良く学び素晴らしい作品を残しており、その作品は貴重でメトロポリタン美術館にもいくつか所蔵されています。
このカメオはマスターピースと言えるでしょう。
斜め横。この素晴らしい石の層の使い方にも是非ご注目下さいね!
石は暖色系のアゲート、石がすでに美しい色合いですが、複雑な色合いの石の層を巧みに彫り分けて3人の人物を表現した素晴らしい表現力です。
天才的なアーティストだったことが伺えます。
このように厚みはそれほどないカメオですが、それを感じさせない素晴らしい表現力です。薄い石にたくみに人物を彫り分けるのは高い技術とセンスを必要とした筈です。
反対側。
真横。
反対側。
シャンクは手彫りの彫金、この部分はオリジナルの彫金ですが、、
このベゼル横の彫金部分、ここはオリジナルではありません。
18世紀のシャンクのデザインの中からこのカメオに合わせて選んで、アンティークジュエリー専門の職人に作らせたリングです。
仕上がりを見た瞬間、この美しい出来映えに思わず笑顔になってしまいました。
ここまでの出来映えならオリジナルと言ってもわからないと思いますが、全てがオリジナルリングと、一部のみオリジナルリングとでは価値に差がありますからお伝えするべきでしょう。
裏面。