1830年 カメオ アリアドネ
シックなモノトーンの3層の色を持つアゲートを巧みに使った美しいカメオは、バッカスの妻、ミノアの姫アリアドネをモチーフにしています。
古の彫刻に模倣したネオクラシックスタイルで表現された彼女は、頭にはバッカスのアトリビュートである葡萄の葉、体にはヤギの頭のついた皮を身にまとって います。アトリビュートからバッカスの巫女バッカンテと良く似ていますが、バッカンテの場合はテュルソスが彫り込まれている筈なので、この女性はバッカス の妻アリアドネでしょう。
彫刻を思わせる静かな美貌の彼女は獣の頭のついた毛皮を身にまとっていますが、この毛皮はネブリッドと呼ばれ、燃えるようなエネルギーに満ちあふれた動物の生命を表しており、バッカス信仰のアトリビュートでもあります。
ネブリッドにはいろいろな種類があり、豹がよく見られますが、豹だけではなく、ヤギ、山ひつじ、山猫、狐などの場合もあります。そして、ネブリッドはバッ カスだけではなく、バッカスに関連のある者達、メナード、サティーフ、シレンヌ、バッカンテらが身につけ、パンやアルテミスもネブリッドを身につけている 場合があります。
このアリアドネが獣のネブリッドを身にまとった姿で表されているのは、おそらく、静かな美貌と粗野な獣の対比を表したかったか、アリアドネの肩付近にある黒い石の模様がネブリッドを表現するのに丁度良かったか、どちらかの可能性を感じます。
美しく静かな顔立ち、大理石彫刻がそのままカメオになったような美しさです。
ヤギのネブリッドを身にまとっています。
焦げ茶色の美しい濃淡と白い層を上手く使った素晴しいカメオ作品です。
カメオの彫刻としての美を強く感じます。
斜め横。
ペンダントとして主に使用されていたようですが、ブローチピンを付けてブローチとして使用することもできます。