CASTELLANI サイン無しネオビザンチンスタイル　ブローチ

この美しいブローチは(実物は艶感、立体感など写真の数倍の美しさです!)
イタリアから来たディーラーから買い付けた作品です。
彼らは20分ほどの間に200個以上の素晴らしいジュエリーを魔法のように次から次へと見せてくれましたが、買い付けたのはこのブローチのみです。

200個も品物を見るのに、20分では時間が足りないのでは?と思う方もいらっしゃると思いますが、
美しいデザインかどうか?買い付ける品物かどうか?というのは見た瞬間に分かるので、流れ作業のようにそれほど時間はかからないものなのです。
そして、200個も見て一つだけしか仕入れられないというのはそれだけ美しいアンティークが少ないということ。
大概は、デザインにまとまりがなかったり、作り変えられていたり、壊れていたり、フェイクだったりと何か問題がある場合が殆どです。
パリにいると、沢山のアンティークを見る機会が多く、優先的に選べるのでその点は本当に良いなと思います。

200個の作品の中から選んだこのブローチは、クロワゾネエナメルの微妙な色合いや美しい金細工、そしてネオビザンチンスタイルのデザインなどが美しく、見た瞬間に心惹かれました。
ブローチの全体のデザインからイタリアのジュエラーカステラーニの事を思い出し、購入後に早速本で調べてみることにしました。
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まず、この本で調べてみました。

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このブローチとほぼ同じデザインの作品が掲載されていました。
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こうして並べて見ると、ほぼ同じテイストのデザインですね。
カステラーニは同じデザインのジュエリーを二つ作りませんでしたから、全てが一点物です。ですから似たデザインでも色などのテイストを変えて、いくつかの別のパターンの作品を作っていたのです。

他にも資料を見てみましょう。
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次はこの本を見てみます。
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カステラーニのジュエリーのデザイン画の中に、
ほぼ同じ作品のデザイン画を見つける事ができました。
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そしてこのクラウン、随所にクロスの装飾が施されていますが、今回のブローチとほぼ同じデザインのクロスです。
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アイビーのブローチ(カステラーニ作　プライベートコレクション)
そして、これはカステラーニが得意とした典型的なクロワゾネエナメルのテイストです。今回のブローチのエナメルととても良くにています。

このように、このブローチにはカステラーニのサインはありませんが、カステラーニ作のジュエリーがもつ沢山の特徴を持っていますから、カステラーニ作と言って良いでしょう。

サインが無いのに何故はっきり言えるのか?ですが、意外に思われるかもしれませんが、カステラーニ作品でもサインのないものがあります。この場合、何故サインがなくてもカステラーニ作品である事がわかるかは、このように資料に掲載されている細部の作風や実物の作りを良く確認します。サインがない場合は特に念入りに調べる必要があります。

何故有名なジュエラーでもサインがない場合があるかというと、ジュエリーにサインを入れる習慣自体が最初からあったわけでは無かったからです、例えば、箱にはサインがあるけど作品にはサインが無い場合、もしくはパリュール作品のようにブローチとネックレスのセットの場合、ブローチだけにサインがしてあったりとパターンは様々です。

サインを重要だと考えているのは現代の私達の都合であって(サインがあるものは無いものよりも人気がある為)、当時はそれほど大切な事ではなく、アーティストの彼らにとって大切なのは仕上がりだったからです。
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この資料は1862年のロンドンで行われたインターナショナルエキシビジョンのカステラーニ作品を掲載したものです。
デザインのテイストも良くにていますから、この作品も同年代の1862年頃に作成されたものでしょう。

当時のジュエラー達は優れた感性をもったアーティストでした。
自分の感性で作品を作る事に情熱をかけていた彼らですから、当然、他のジュエラーが作っている作品と似たような作品を作る事はせず、優れたテクニックをもったアーティストほど自分のオリジナリティを追求していたと思います。
そういった心理的な事からも、このブローチがカステラーニ作と言えるでしょう。
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