この素晴らしい古代ローマ時代のカメオは、
類似作品がウィーン美術館、エルミタージュ美術館に所蔵されています。
モチーフは聖書の一説、漁師ペトロとイエスの出会いの話です。
このモチーフはルネサンスの巨匠ラファエロを始め
多くの芸術家がこの題材から霊感を得て沢山の作品を残しています。
(説明最後に7枚の絵画を掲載しています。)
古代ローマのカメオの希少性は群を抜いており、
古代ローマのインタリオの約20~30倍くらいの希少性があります。
何故かというと、インタリオは沈め彫りなので欠けにくいですが、
カメオは浮き彫りなので壊れやすいからです。
そのため残っていても欠けが目立つ場合が多く、
ルーブル美術館にも古代ローマのカメオは数えるほどしか収蔵されていません、
そしてモチーフはメデューサなどが主ですが、
このカメオのモチーフは前述の通り素晴らしさも抜群です。
コレクションとしてお持ち頂くにも十分な価値がありますが、
ジュエリーとしてお使い頂くのなら指輪がお勧めです。
漁師ペトロとイエスの出会いの話をご説明致させて頂きたいと思います。
ペトロは、ガリラヤ湖の北に位置するベトサイダの出身で、ガリラヤの漁師でした。
ベトサイダは多くの漁獲量を誇る漁師の町で、ペトロも先祖から続く漁師の家に生まれ、
父や兄弟とともに漁業をして暮らしていたと思われます。
ある日、ペトロと仲間たちは、徹夜で漁をしましたが何も取れず、
あきらめて舟から上がって網を洗っていた時に、イエスが現れました。
イエスはペトロに、「もう一度網を降ろし、漁をしなさい。」と言いました。
ペトロは夜通し働いてとれなかった魚が、日中になってとれるはずがないと思いました。
しかしこれは"網をおろしなさい"と言われたら、
自分では無駄ではないかと思っても網を降ろしてみることが大切だということを教えています。
これは、実りをもたらすとか、もたらさないとかということは、
人間のほうが決めるのではなく、神の決めることだと聖書は語っています。
このことは人間がどんなに頑張っても出来ることは小さく、
また人間自身がいかに小さな存在であることかを語っているようです。
このペトロは後の初代教皇となります。
学識も無い漁師であったペトロが、後に学者達に向かってキリストの福音を述べ、
また、世界を支配していたローマの政治家たちに向かって申し開きをするようになります。
最初、ペトロはキリストに、「わたしに力は無く、あなたの弟子になる資格のない者です」と言ったとき、
イエスは、「それでいいのです」と言いました。
「その弱さのままでよいから、わたしについてきなさい」そう言ったとき、
ペトロに残されたことは一つしかありませんでした。
「こんなわたしでもよいとおっしゃるなら、わたしは一切を捨ててあなたに従います。」
これがペトロの答えだったのです。
このカメオがウィーン美術館カタログに掲載されている同じモチーフのカメオです。
(ウィーン美術館カタログ掲載 "Die Antiken Gemmen des Kunsthistorischen Museums in Wien", cat. n°2465 )
サンクトペテルブルクにあるロシアの国立美術館、エルミタージュ美術館コレクションより。
古代ローマ 2~3世紀 大きさ0.9cm×1cm
私が扱っているカメオとほぼ同じ大きさ、同年代の作品です。
この漁師ペトロとキリストの話は歴代の偉大な芸術家達に霊感を与え続けてきました。
現代でも多くの絵画が残されているのはそのためです。
Raphael (1483?1520)
「The Miraculous Draught of Fishes」1515年
Anton Losenko (1737年~1773年)
「Miraculous Catch」1762年
Konrad Witz (1400?1447)
「The Miraculous Draught of Fishes」(1443年〜1444年)
Jacopo Bassano (1510?1592)
「The Miraculous Draught of Fishes」(1545年)
James Tissot (1836?1902)
「The Miraculous Draught of Fishes」1886年〜1894年
Henri-Pierre Picou(1824?1895)
「The Miraculous Draught」