15世紀 受胎告知の天使 大理石 頭部像
触るとひんやり冷たい大理石ですが、内側には常に熱い情熱がこもっているように思います。
古い大理石の彫像が完璧なコンディションで残っている事は稀で、何かしらの欠損が見られるのが普通です。
そして、その欠損は、その大理石像が体の一部を失いながらも静かに過ごしてきた長い年月と共に、
見る者の想像力に強く訴えかけてくるのです。
見る者の心の中にだけ、その完璧な姿を現してくれる事でしょう。
この大理石像は鼻と頭に欠損が見られます。
一体どのような物語がこの大理石像にあったのでしょう?
この大理石像は、顔立ちや髪型からおそらく受胎告知の天使だと思われます。
このタイプの大理石像は屋外と屋内の建物の壁の装飾として使われている事が殆どでした。
右下の大理石像は14世紀〜15世紀の南フランスの作品です、
このように大理石像は鼻が欠損している場合が殆どで、他にも良く見られます。
今回ご紹介している大理石像も鼻が欠けています、そして頭の大きな欠損は
恐らくなんらかの理由で壁からこの大理石像が落下し、
その時に出来た大きな欠損である可能性が高いでしょう。
そしてこの大理石は珍しいイタリアのカラーラ産の大理石です。
カラーラ大理石は古代ローマ時代には既に存在していました。
この女神の頭部像はグレコロマンの作品でカラーラ大理石が使われています。
本来、大理石は丈夫でとても重い素材です、そして悪天候の中にあってもその美しさを保つ事ができます。
しかし、欠損していても、大理石像はある種の神秘的な美しさを漂わせています。
それは、この美しい神秘的な欠損が、この大理石像が本来どのような姿で生まれたのかを私達に想像させる余地を与えてくれるからです。